旅 日 記
大歳神社の千年藤 神庭の滝 大山 2006年5月8日(月)
ようやくゴールデンウィークも終わる。
「新緑、きれいやろな〜。どっかええとこないか?」
「そやな〜。あることはあるで〜。せやけど紅葉の名所らしいわ。」
「紅葉がきれいやったら新緑もええんとちゃう?」
「と思うで〜。ほな、明日は天気も良さそうやし、出かけるか?」
それは神庭の滝。岡山県真庭郡勝山町、いや今は真庭市に変わったそうな。この平成の市町村合併が必要なのはわかるが、昔の名前で覚えている者にとっては迷惑この上ない。また情緒がある名前も多く、残念に思うのは私だけだろうか。
最近は高速道路の利用が多くなってきた。昨年の入院騒ぎからばあさんもあまり文句を言わない。いや、積極的に勧めてくれる。それはそれでありがたいことだが、何とか節約したいとは思っている。根っからの貧乏性? これも永年にわたり飼いならされた習性?
神庭の滝へは中国道、米子道を利用して久世インターチェンジまで。ところがETCの通勤割引を利用するとなれば一度山崎インターチェンジくらいでおりる必要がある。
ちょっと待てよ、山崎インターチェンジと言えばこの時期、ちょうど咲いているものがあるじゃん。
そう、大歳神社の千年藤。7〜8年前の5月に訪れたことがある。その時は少し遅かったようで見ごろは過ぎていた。そのあと播州山崎花菖蒲園にも寄ったっけ。
その大歳神社の千年藤、聞けば今年はちょうど見ごろだそうな。そこで寄り道することにし、7時前に到着。
明るい太陽が光を投げかけ始めた大歳神社の狭い境内を所狭しと見事な藤棚が覆い尽くし、一歩足を踏み入れただけで独特の甘い香りが鼻をくすぐる。昨日の雨がその香りを増殖したのだろうか? その雨にうたれた花びらが地面に敷き詰められていた。
しかし最初は良かったが長くいると少し鼻につきだし、とうとうばあさん、
「なんや頭が痛となってきた。もう帰ろ。」
そのとき大きなカメラを構え、我々より先に来られていたおばさん、
「いい香りですね〜。」
言われたばあさん、
「そうですね〜・・・」
なんのこっちゃ。個人差もあるのだろう。まあ、良い香りは確かですから・・・。しかしやはり強烈だった・・・かな?
そうそうこの神社、今日までおおとし神社とばかり思っていたが、なに? ださい神社? 日本の地名の読み方の、なんと難しいことよ。
さて、いよいよ神庭の滝である。駐車場から歩くこと10分足らず、静かに流れる渓流沿いには野花が咲き、しっとりとした空気は少し冷たい。大きな岩に張り付いた苔から静かに流れ落ちる数筋の水、玉すだれの滝と言うそうな。人影は無く、二人だけの世界。静かである。せせらぎの音以外は何も聞こえない。
やがて萌え出したばかりの新緑に守られるように大きな滝が目に飛び込んできた。その落差、110mだそうな。その存在感、これは納得。もみじの木も多く、ばあさん
「これは秋にも来なあかんやろ。」
時間はまだ9時半になったところ。さてどうする?
「温泉にでも浸かるか? 近くに湯原温泉があるわ。」
湯原温泉には河原の露天風呂砂湯があるが、さすがにばあさんは無理だろう。
そこで湯原ふれあい交流センターのさらりとしたお湯で一汗流し、ほっこりして出てみると、
「温泉に浸かって考えてたんやけどな、行きたいとこ思い出したわ。」
なに? 峰? 境港にある食事どころだが、そう言えば事あるごとに言われていたっけ。
「え〜、わざわざ行くんかいな。そらおいしいて安いとこやけど、かなり遠いで〜。」
「高速道路を使こたらすぐやん。」
いやはや・・・。おっしゃることが今までと随分違いますこと・・・。
その高速道路を湯原インターチェンジから米子インターチェンジまで利用して一路境港へ。ちょうど12時に到着した峰は改装されたらしく、とてもきれいになっていた。随分お稼ぎになった?
相変わらずの満席状態でしばらく待たされたが、メニューがすっかり変わっている。ばあさんは毎日20食限定、1200円のお弁当にご満足のご様子。
ところが私が食べたかった1800円のお刺身定食がメニューから消えているじゃん。なに? お刺身の盛り合わせが2650円? それにご飯とお吸い物をつければ3000円を越える? そこで1800円の定食を注文。
しかしそれはばあさんが以前食べていた1500円の月御前と同じじゃん。と言うことはやはり値上げ? まあ、お店も美しく改装されたことだし仕方がない? 少しだけついていたお刺身はさすがにおいしかったが、これならどこにでもある定食と大して変わらない?
やはりお刺身の盛り合わせを注文するんだったかな? しかし昼食に3000円? そのお値段ならどこでもおいしいものが食べられそうじゃん。今までのように1800円だからお値打ち感があったと言うものだろ? これならわざわざここまで来ることもなかった?
「そう言うたらそうやな〜。」
なんだかモヤモヤした空気を読み取ったように空には厚い雲がかかりだした。
ここまで来たのなら大山の新緑も見たいが雲に隠され、全くその姿はない。大山は何度目だろうか。だがいつも雨や霧ばかりでまともに大山を見たことがない。どうも我々とは相性が悪いようだ。
米子の水鳥公園? 渡り鳥なんて冬のものだし・・・。とっとり花回廊? 同じ行くなら天気の良いときに行きたいし・・・。
仕方がない。大山は見えなくても美しい新緑なら見られるだろうから登ってみるか?
大山道路の道路際の木々もやさしい緑の葉っぱに模様替え。周りの山々も間もなくその模様替えが完了するだろう。相変わらず厚い雲が空を覆ってはいるが視界は良好。それも登るに従い徐々に明るくなりだした。
それは突然のことであった。木々の間から少しばかりの青い空が見えてきた。
「ほらほら・・・山が・・・。」
とばあさんの大きな声。
「え〜? 嘘やろ〜。ほんまや。きれいやな〜。」
見上げれば半分ほどの青空が広がり、澄んだ空気にその姿をより一層くっきりと浮かび上がらせている大山が・・・。この道を走ったのは何度目だろうか? こんなに素晴らしいところだったんだ・・・。通る車もほとんどないことを良いことに道路際に車を止める。
「何してんねん。今のうちに早よ行かななあかんやろ。」
そうでした。この晴れ間がいつまでも続く保障などありませんから・・・。
大山寺下からはさえぎる物が何もなく、より大きな大山を眺めることができた。こんなに美しい山だったんだ〜・・・と改めて確認。感動・・・。こうなれば鍵掛峠だ。よ〜し、行くぞ〜。
ところが枡水高原へ向かうとガスがかかりだし、間もなく視界がなくなった。なんじゃ〜こりゃ〜。どういうこと? これはダメじゃん。
ほとんど前が見えない。ゆっくりゆっくりと車を走らせる。仕方なく向った大山まきばみるくの里、ここも何度か来ているが、それは早朝ばかり。コスモスが美しかったっけ。営業が10時からゆえ、中へは入ったことがない。
牧場も霧の中、建物がようやく確認できる。初めて入った大山まきばみるくの里ではレストランとバーベキューハウスと売店。その他にも体験施設のみるく工房もあるそうな。
「この牛乳、濃い〜ておいしいで〜。ソフトクリームも、もうたまらんわ。」
と大満足のばあさん。
さて、どうする? この霧では仕方がない。だが待てよ? 先ほどの大山寺下では晴れていたし鍵掛峠も晴れるかも知れない。ここは再度の奇跡を期待して・・・。
大山環状道路のカーブの多い道をゆっくりと進む。やがて一の沢、そして二の沢、三の沢と進むに従いだんだんとその霧が薄くなってきた。これは期待大である。よ〜しいいぞ〜、雲よ晴れろ〜!
その気魄におののいた? 到着した鍵掛峠では山が見えている。大きな大山と大きく広がる裾野が美しい。その裾野には緑の絨毯と新緑の木々、そして残雪の険しい岩山、そのコントラストがまた素敵ではないか。
ところが頂上にかかったわずかな雲がなかなか動かない。待つこと15分、いや30分? ようやくその全貌を現してくれた。雄大である。なに? もう少し青い空がほしい? だがそれは贅沢と言うものだろうか。
奥大山に向かうとブナの木のトンネルが続き、その新緑がことのほか美しい。だが下るに従い、また雲が多くなってきた。
蒜山高原へ向かうと道中ではまだ八重桜が最後の花を咲かせていた。だが鬼女台からはなんとも冴えない眺めである。
蒜山高原では緑の芝生が目に優しく、立ち寄ったひるぜんジャージーランドでは菜の花が咲き、遠くには牛の姿も見られる。だが蒜山三山は雲に隠れたままで姿を現さず、夕暮れが近くなり、ついに霧雨が降り出した。
倉吉から鳥取を目指し、すし若鳥取店で夕食後一路帰路につき、10時30分無事帰宅。走行距離 766Km。あまりにも盛りだくさんな行程ゆえ、今日も少し疲れたかな?
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