旅 日 記


別府、湯布院、黒川、各温泉を巡り、くじゅう、阿蘇へ


仙酔峡と阿蘇中岳 2007年5月16日(水)


 7時前、車に乗って出かけた。お宿玄河では姉妹館である 「里の湯和らく」 と言う旅館の露天風呂が無料で利用できるそうな。歩けば1時間以上かかり、車で行くことを勧められた。それもそのはず、山深い林の中じゃん。ここも黒川温泉?

 駐車場に停まっているのは高級車ばかりのようだ。なに? 一泊二食23000円以上? これは我々庶民、いやばあさんと私のような貧乏人夫婦が来るところではない。先客がお一人、のんびりと湯浴みをされていた。どちらかの社長さん? そんな風格をされていた。お湯は少し硫黄の香りがするが、サラッとしている。


 今日も朝食後、すぐに飛び出した。天気は下り坂、午後からは雨も降るらしい。ならば午前中に出来るだけまわりたい。その上昨夜聞いたところによると、これから向かう仙酔峡はミヤマキリシマが見頃ゆえ、先日の休日には駐車場へ入れずに大渋滞、結局3時間以上かかったそうな。昨日の吊り橋のこともあり、できるだけ早く行くのが賢明だろう。

 瀬の本高原まで戻り、やまなみハイウェイで阿蘇を目指す。

 城山展望台からは根子岳をはじめ阿蘇の山並みと、真下には正確な長方形に区画された田んぼがうっすらと見えているが見通しは極めて悪い。

 仙酔峡への登り道ではすぐ目の前に大きな赤牛が草を食み、緑の丘の上に仏舎利塔が見え、のんびりとした雰囲気が漂っている。だがあまりゆっくりとはしていられず、先を急ぐことにした。

 まだ9時だと言うのに仙酔峡の駐車場はほぼ満車である。まわりにはミヤマキリシマの群生が見られるが、混雑と待ち時間を考えるとまずはロープウェイだろう。標高差300mを9分で運んでくれる。

 到着した火口東駅では強い風が吹き、少し寒く感じる。曇り空ながら見通しはそんなに悪くない。しかし阿蘇の町並みと外輪山はボーっとしか見えない。

 急な坂を登るが風が強くてなかなか前へ進まない。まわりは茶褐色の岩がゴロゴロ、ゴロゴロ。これぞまさに火山の様相だろうか、何箇所も設置されているシェルターが空恐ろしく感じられる。道は舗装されとても歩きやすいが、それをあざ笑うかのように吹き降ろしてくる強風に逆らってゆっくり、ゆっくりと約20分。

 ようやく到着した阿蘇火口東展望所からは火口の底は見えないが、うっすらと上がっている蒸気が確認され、大きな火口とその周りの様相に驚愕。

 私はこの阿蘇山へは修学旅行と、その後もう一度来たことがある。もっともそれは40年ほど昔の話。その時には西側の火口しか知らなかった。いや、この東展望台へのロープウェイは無かった? ここからはよりリアルな火山の実態を感じることが出来る。

 真向かいに見えている火口の西側にはやはりメインであるらしく、たくさんの人の姿が見られる。振り返れば目の前に大きな中岳、そして尾根伝いに登山道が曲がりくねって続き、登山している人の姿。また、ロープウェイに沿って歩いて降りる人もいる。

ワイド写真

 ロープウェイで下り、改めて仙酔峡を散策。急な斜面に咲く満開のミヤマキリシマを愛でながら小高い頂上を目指して登って行く。ミヤマキリシマとはツツジの一種だが、花は小さく、なんとも可愛い。以前、奈良の葛城山で満開のツツジを見た時、その強烈な臭いに辟易したばあさん、それ以来ツツジを見に行こうとは言わなかった。しかし、このミヤマキリシマはそんな臭いは全くなく、気分良く歩ける。

 ロープウェイからも見えていたが、遠くから眺めると花の咲いているところがまだら模様に見え、またその色も地味な感じがしていたが、手に取るように眺めながら歩いてみるとなかなか趣のある花ではないか。これは素敵な散歩道。いや、散歩道と言うには少し急斜面すぎるかな?

 火の山を鎮めるべく、お地蔵さまが山に向かって手を合わされていた。

(仙酔峡ロープウエーは2010年5月から運休、2011年12月に営業休止がきまり、その後撤去されました。)


 早くも12時をまわっている。1時間30分、せめて2時間の予定だった。これでも急いでまわったつもりだが、そこは阿蘇山、それだけスケールがでかいと言うことだろう。

 小さな食堂で昼食を簡単に済ませ、出てきたところで雨が落ちてきた。それもだんだんひどくなる。

 まわり全てが緑一色の阿蘇パノラマラインを登って行く。牧場ではのんびりと牛が草を食み、見事にお椀の形をした米塚が見えてきた。草千里も雨に煙り、これではどうにもならない。

 それよりこれ以上悪くならないうちにまずは噴火口見物をしなくっちゃ〜・・・。この雨ではロープウェイよりは有料道路だろうと火口西口まで登る。

 到着した阿蘇中岳火口では傘もさせないほどの強い風、そして吹きぶりの雨。大きな火口からは噴煙が吹き上がり、美しい青緑色をした火口湖の水面が見え隠れしている。東口から見た岩の風景とは全く異なり、火山灰で固められたような姿に興味をそそられる。
ワイド写真

(阿蘇山ロープウエーは2016年の熊本地震と大噴火から運休、2019年12月に廃止が決定、その後はバス輸送になっています。)


 今日はこのあと南阿蘇へまわる予定であった。だが今朝から周りの山もスッキリとは見えず、そこへこのより悪くなった天気では行っても仕方あるまい。明日も天候の回復は望めそうにないと言う。ならばどうする?

 「こらどうにもならんやろ。どっか温泉にでも浸かってゆっくりせえへんか?」

 「それええな〜。」

 以前から私には気になる、いや行きたい温泉が二つある。一つは長湯温泉。炭酸泉で気泡が肌にまつわりつくそうだ。もう一つは平山温泉。ぬるぬるとしてまるで化粧水に入っている感覚だと言う。

 今回は当初から帰り道、平山温泉に寄ることにしていた。ならば阿蘇内牧温泉のはな阿蘇美でバラの花などを見て大観峰、菊池渓谷から平山温泉へ行こうではないか。

 ところが平山温泉の旅館へ電話をしてみると、調べてきた4軒が全て満室だそうな。もっともどこも部屋数が少ない小さな旅館。しかし、こうなるとどうしても入りたくなるのも人情? 行って観光案内所で聞けば何とかなるか?

 この雨でははな阿蘇美へ行くのもなんだか億劫になってきた。そこで大観峰へ向かったが、ここでも車から降りることさえはばかられるほどの荒れ模様。付近は見事な緑の高原が続いてはいるが・・・。

 雨に洗われ、より美しくなった菊池渓谷の新緑を横目に菊池市内へ。ここにも温泉があるそうな。下るに従い雨も小降りになり、山鹿市内ではどうにかあがったが、なんだかムカムカし、それ以上に馬鹿らしくなってきた。このまま泊まっても明日はどうする? 特に行きたいところもなく、ただ帰るだけ? それも味気ない?

 ならば平山温泉で入浴だけしてそのまま帰るか? 運転が少しは辛いだろうが、休み休み、仮眠を取りながらなら大丈夫だろうし、宿泊料金も助かる。ばあさんは、大丈夫?・・・と心配してくれてはいるが、本来ケチなお方。本音は?


 山鹿市内でガソリン補給。そのスタンドのお兄さんに聞いてみた。平山温泉と言っても泉質はいろいろらしく、各旅館で違うそうな。

 「私は万人向きのサラッとした湯の蔵が好きです。」

 ふ〜ん、そうなんだ〜。私が求めているのとは違う? ここは万人向きよりもやはり評判の 「ほたるの長屋」 かな?

 と言うことでそのほたるの長屋へ。宿泊棟が2棟と貸切風呂が7室。入浴料は1室1時間2000円。タオルと石鹸などを持って行けば1500円になる。

 小さな脱衣所と半露天岩風呂。そのお湯は思っていたよりサラッとしていて少し温めだが、浸かってみると肌にまとわり付き、ヌルヌル、ツルツル。やはり違うようだ。龍神温泉もこんなのだったかな?

 50分ほどゆっくり入浴。汗をふきふき出てみるとせっかく上がっていた雨が今度はどしゃ降りじゃん。南関インターチェンジから高速道路へ入り、帰途につく。古賀サービスエリアで夕食。激しい雨が降ったりやんだり。また油断していると時々ハンドルをとられるほどの強風が吹き荒れていた。

 各パーキングエリアで何度眠ったことだろう。無理をせず、80〜90Kmで安全運転。翌朝6時過ぎ無事帰着。全走行距離、1769Km。

 なんだか消化不良の旅になってしまった。今となってはばあさんの言ってた通り7日の出発なら・・・と悔やまれるが、ミヤマキリシマも見ることが出来たし、阿蘇山のもう一つの顔や雄大なくじゅうの風景にも出会えたし、まあ、良かったかな? 考えようでは、もう一度訪れる理由ができた?


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