旅 日 記
上高地~新穂高
2000年10月19日
車をホテルに置き、平湯6時30分の始発バスに乗り込む。さすがに乗客は3割くらい。バスは安房トンネルを通るからさすがに早く、わずか20分で大正池に到着した。上高地は夏山登山で何度か来ているが、いずれも河童橋から上で、大正池は車窓からの景色しか知らない。
鏡のような水面のキャンパスに周りの景色を忠実に、それも逆さに描いている大正池が目の前にある。息を潜め・・・だが、わずかに漏れる吐息が揺らす静かな水面・・・朝日に照らされて輝く裸の焼岳・・・バス道から一歩踏み入れただけでこの世界である。早朝のさわやかな風とこの空気がもたらす雰囲気に早くも飲み込まれてしまった。
雲ひとつない青い空、研ぎ澄まされた空気、そして雪化粧をしてそびえ立つ穂高連峰・・・これぞ上高地であろう。
人が溢れる上高地など・・・と馬鹿にしていた若かりしころの我が身を反省・・・。
年のせいもあるのだろうか? これで早くも十分に満足・・・そんな気持ちを断ち切り、改めて奮い立たせ、河童橋を目指して歩きだす。
ほどなく到着した静かな林の中の田代池では霜で真っ白に化粧をした沼や木や草がひっそりとたたずみ、背後にそびえ立つのは六百山だろうか、その影がくっきりと映りこみ、まるで幽玄の世界である。
苔むして、うっそうとした森を抜けると清流流れる梓川。この一時間はあっという間であった。
やがて河童橋。絵葉書そのままの、真っ白に化粧した穂高に手が届きそうだ。
正面には緑の林、そしてその先にはわずかに色付いた岳沢が広がり、その上には雪山に変身した穂高連峰がそびえ立っている。
これが三段染めか~・・・。紅葉がもう少し進めばもっと素晴らしいのだろう。
出来ることならもう一度、北穂高小屋のテラスでさわやかな風を浴び、モーツアルトを聞きながら、おいしいコーヒーを飲んでみたいな~・・・。
ホテルに戻り、これで心置きなく帰途につける。しかし、しかしながらである。あまりにも良い天気だし、時間もまだ10時。また遊び心がうずきだした。
乗鞍スカイラインはいまだに通行止め。どうやら今シーズンは終了になるらしい。ならば新穂高へ行ってみよう。
ところが・・・駐車場がほぼ満車である。今日は平日、それも週の半ばだと言うのに・・・ロープウェイの待ち時間を聞くと30分ほどだと言う。その程度なら・・・と切符を買って並ぶことにした。だが、なかなか前に進まず、山の神、いや女王様は痛くお怒り・・・ついにはキャンセルして帰ると言い出した。でもせっかくここまで待ったのだし・・・と説得。結局1時間半も待たされた。
ところが展望台へ登るとコバルトブルーの空と槍ヶ岳、穂高連峰、笠が岳など、360度の大パノラマが広がっているではないか。
私はこの新穂高ロープウェイは三度目、山も結構見てきたが、実際これほどの青い空に出会えるのは珍しい。長時間並んだ甲斐があると言うものだろう。
しかし・・・我が家の女王様は怒りがまだ治まっていないご様子。これは困った。召使としてはどうすればよいのか? オロオロオロオロ・・・。
とは言えなすすべもなく・・・これで昨日のリベンジも果たせ、もう思い残すことはないだろ?・・・と帰途につく。古川町からは天生峠へ。急カーブの連続と急勾配、そして狭い道が続くが、これでも一応立派な国道である。私は山道が好きでこんな道もあまり苦にならない。しかし今は季節も中途半端なのか、景観は・・・?
続いて白山スーパー林道へ向かった。頂上付近の紅葉は今が盛り。なのにいまだ少しだけ不機嫌なおばはん、
「フン、たいしたことないやん。」
観光バスから降りた乗客は大はしゃぎしていると言うのに・・・今回見てきた立山や上高地に比べてやるのも可哀そう? 高い通行料金がなぜかむなしい。
勝山を通過。はや夕闇が迫っていた。
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