旅 日 記
憧れの礼文島
2004年7月12日
朝4時30分起床、昨日買っておいたパンをかじり5時30分には港に着いていた。空は相変わらず曇っている。東日本海フェリー、6時20分発礼文島香深港行きの便に乗船。しかし6時前にやっと並びだしたくらいで、こんなに早く来なくても良かったらしい。
だがこの寒さゆえオープンデッキの椅子席に乗る人は無く、室内の二等席は満員である。昨日買ったタイツのおかげで寒くも無くちょうど良い。カミさんもジーンズの下にパンストを履いている。また酔い止めの薬を飲んでいたから出航と同時にコックリコックリ。
カモメのため、いや女王様がカモメとたわむれるためにエビセンを買ってきたのだが・・・。仕方がないと一人デッキに出て他の人が与える餌を求めて集まってくるカモメと遊ぶ。ならばエビセンはおやつに早変わり? 黒い雲が空を覆う相変わらずの天気だが、比較的海は穏やかでそんなに揺れは感じない。
同乗したお方の話では稚内港の有料駐車場の近くに大きな無料の駐車場があったそうな。そんなこととは知らずに一日1000円の駐車場に預けてきた。何だか2000円、損をしたようだが、もし車に傷をつけられたりしたら保証してくれる? そんな訳無いっしょ!
利尻島が見えてきたが利尻富士の姿は無い。やがて礼文島の島影も現れ、定刻の8時15分、香深港到着。8時30分発の定期観光バス、運賃4000円のDコースに乗車した。なんと2台で出発、それも満員である。
バスは北へ向かいまずは澄海岬を目指している。近付くに従い徐々に空が明るくなってきた。そして到着した澄海岬ではついに晴れたではないか。久し振りに、いや北海道初めて見る青い空、それもこれ以上ない、いや今まで見たどの空とも違う真っ青な空である。やはり空気も澄んでいるのだろう。
澄海岬の海の色はあくまで青く、ブルー、紺碧、藍色・・・どんなに形容詞を使おうがこの美しさは表現できない。それも澄みわたっている。そこへ荒々しい岩山が広がる素晴らしい眺めにうっとり・・・。
思い切ってこんな最果てまで来て良かったぁ~。カミさんが船に弱いものだから礼文島は半ば諦めていたのは事実である。彼女も最初で最後のチャンスだと意を決したのだろう、自ら行こうと言い出し驚かされたものであった。
江戸屋山道では下車して少しばかり散策、目の前に広がる美しい緑の丘は牧場だったそうな。だが今はその主たる牛の姿もなく、ただただ雄大な眺めを楽しませてくれている。
ガイドさんが道路際に咲いている可憐な花を懇切丁寧に説明してくれるが簡単に覚えられるものでもない。その花たちは本州の2000m級の山に咲く高山植物と同じだそうな。
やがてスコトン岬。日本最北限の地? それも言うなら日本最北端だろ? なに? それは宗谷岬? しかしそんなに差はない? だから再北限と名乗っているそうな。これは意地? しかしそんなことどちらでもいいじゃん。
風がかなり強いがジャンバーを着込んでいるからか、それともさすがに7月の風なのか、とても爽やかで心地良い。見渡せばどこまでも大きな青い海が広がり、目の前のトド島に向かって連なっている岩はまるで碁石を並べたよう。それも大きなものからだんだん小さくなって並んでいる。
澄みきった水が海の底の模様を手に取るように見せてくれている。やはり北海道の海は一味違っているらしい。こんな美しい海があるのだろうか。積丹ブルーも素晴らしかったが、軍配はこちらかな? それともここではより近くで見ることが出来たからかな?
なに? 日本最北限のトイレ? そこまでやるか・・・。その名前も原因? それは定かではないが、長~い行列。差し迫って必要な人はどうするの?
バスは元来た道を南に向かって走っている。空の雲は完全に取り払われたようだ。
突然利尻富士が見えてきた。なんと美しい山だろう。感動! 空気が澄み切っているのか? 強い風がそうさせているのか? これ以上は望めない姿で見え隠れし、だんだん大きくなっていく。
やがて桃岩が姿を現し、トンネルを抜けるとガイドさん一押しの風景が広がっていた。なるほど、自信を持って言うだけのことはある。緑の丘と青い海が絶妙のバランスで、どんな偉大な芸術家でも作りえないこの構図に納得させられた。こんな素晴らしいところが日本にもあるんだ~。
(写真タップでパノラマ)
桃台猫台でも可憐に花が咲き、より大きな利尻富士がすぐ近くに見え、桃岩も見る角度で違った姿になり・・・その岩が苔に覆われ・・・いや絨毯を一面に敷き詰めたようにも見える美しい緑・・・そしてその全てを優しく包みこむ大きな紺碧の海、青い空・・・そんな光景に圧倒される。
あの建物は? かの有名な桃岩荘だそうな。こんなところにあるのか・・・。その前の海は遠くからでもその透明度がわかる。こんなところなら何度でも来る価値ありだろう。
この数分、いや数十分は今まで経験したことがない至福の時間であった。 ただ、風が異常に強く、いつまでも陶酔しているわけにもいかず、現実の世界へ引き戻されてしまった。 これが最果ての島、礼文島を実感できた最たるものだったかな?
その余韻を残したまま、4時間あまりのバスの旅は終わりを告げた。心地良い疲れが体を包みこみ、何だかボ~っとしている。だがこれで満足などしてはいられない。まだ見ていないものがある。礼文島に来てレブンウスユキソウを見ずして帰る訳にいかないではないか。
そこでフェリーターミナルの前にあるレンタバイクの店へ。だが礼文林道はレンタカーとレンタバイクは通行できないと言う。なに? 自家用車なら通れる? それはちょっとおかしく無い? 砂利道でもあり危険防止のためだというがどうも納得がいかない。一台でも多く車をフェリーで運びたい?
時間はまだ1時前、さてどうする? とりあえず昼食をとりながら考えようか? なに? またうに丼? 「千鳥」 で食べた3500円のうに丼に満足げなカミさん。私が頼んだ1400円のホッケのチャンチャン焼きも最高じゃん。やっぱり北海道、それも礼文島に限る?
ここから今夜お世話になる一番館は近いらしく、とりあえず荷物を預けようと向かった。ところが若いアルバイトの男の子が相談にのってくれ、礼文林道の登り口まで送ってくれると言う。そこから歩いて往復2時間くらいだそうな。やさしいね~。感謝感謝。
緩やかな登りが続く道を我々のペースでゆっくりゆっくり。山の反対側に当たるらしく、あれだけ強かった風もあまり気にならない。美しい緑の山並みが続き、振り返れば大きな海とそこに浮かぶ利尻富士。
道端には可憐な花が咲き、風の音、鳥の鳴き声、それ以外は何も聞こえない。たまに車とバイク。やはりここでは似つかわしくない?
ここ北海道でも行った先々で鶯の鳴き声を聞いてきた。もちろん今日も・・・。だが今まで聞いたどの声よりも大きくて良く響き、またより透き通った美しいさえずりに聞きほれる。それにも増して谷渡りの鳴き声がとても長く見事の一言、ここまでになると最早立派な演奏家と言っても過言ではない。ケキョ・ケキョ・ケキョ・ケキョ・ケキョ・ケキョ・・・。カミさんが数えだした。18回、19回・・・。え~? そんなに? 鶯もやはり北海道、それも礼文島仕様?
ようやく出会えました。レブンウスユキソウ、それもたくさん咲いていた。何か気品が感じられ、とても美しい。我々庶民、いや我々夫婦には手が届かない高貴な花? だがとても親しみやすく、可憐で可愛い。
アルバイトのお兄さんのおかげでこれはいいものを見せていただいた。カミさん、
「礼文島・・・思い切って来て良かった~。」
一番館は小さな宿、小さな部屋だが、夕食はその料理のバランスと言い量と言い味と言い、申し分ない。ウニの土瓶蒸しが絶品、これで8500円は納得。
同宿者は道内の人が多いようだ。我々と同年代の美幌の二組のご夫婦、八雲のお父さん夫婦との楽しいおしゃべりで、なお料理がおいしく感じたのだろう。
ところがこの先の予定を話したところ旭岳ロープウェーが休止しているとの情報。一ヶ月ほど前に事故があったのは知っていたが、その後のことはわからなかった。ほんの2~3日前のニュースらしい。これは困ったことになりそうである。
Next Top
|