旅 日 記


能登半島 2000年9月19日〜21日(火〜木)


 左目の白内障の手術から間も無く一ヵ月半。 目薬は欠かせないが、経過は順調。 しばらくおとなしくしていた反動からか、行楽シーズンを前にして何か落ち着かない。 パート勤めのカミさんは三連休、天気も良さそうである。

 我々夫婦は魚が大好きで、お寿司も・・・。 そう言えば商っていた店が立ちいかなくなったこともあり、行きつけの寿司屋からは足が遠のき、ここ何年もおいしいお寿司が口に入ることはなかった。 以前、一度だけ行った回転寿司はまずくて食べられたものでなく、最近は安くておいしい新鮮なお刺身を求めて小浜まで行くことが多い。

 ところが先日、旅行雑誌で金沢の回転寿司いき魚亭の記事を見たカミさんは興味津々。 私は一度なぎさドライブウェイを走ってみたかった。 だが、我が家での優先順位は・・・当然ながら大黒柱である女王様。 そこで彼女のご命令に従い、一路金沢へ向かうことになったのである。

 出発は早朝5時。 敦賀を経て、よく晴れた穏やかな日本海を眺めながら越前海岸をドライブ。 最近、バスツアーの広告で何度か見た福井宮の下コスモス公苑に道を間違え、迷いに迷ってどうにか到着。 が、花が地味でコスモスの華やかさが無く、ガッカリ・・・。

 私は良く道に迷うが、それには訳がある。 助手席で大きな顔をしてでんと構え、あそこへ行け・・・ここで止まれ・・・と好き勝手にのたまうおばはん。 その大きな態度とは裏腹にほとんど地図が読めない。 教えてくれた方角の逆に行けば、ほぼ正解である。

 それともう一つ。 深夜ならいざ知らず、どれだけ迷ってもここは日本だろ? 道はどこかにつながってる・・・と取りあえず走ってみる。 そんな大雑把な性格が災いしているのかも・・・。 最もその道が行き止まりでUターンも出来ず、バックしたこともたびたびではあるが・・・。

 ならばカーナビをつけろ? それは余計なお世話と言うものであり、我が家の大蔵大臣がOKする訳が無い。 道は迷って覚えるもの・・・との若いころからの信念はいまだに変わっていない。


 今日も道に迷ったおかげで時間が押しているのに、羽二重餅を買うから福井市内の松岡軒へ行けとおっしゃる。 今度はガイドブックの地図が店の位置を間違えて載せているではないか。 結局電話で問い合わせなんとかゲット。 11時を回り、いやに空腹を感じる。

 よほどのことが無い限り許可してくれない高速料金を大蔵大臣からぶん取り、金沢西インターチェンジまで北陸道を利用。 野々市の住所を頼りに探すが、結局はタクシーの運転手に聞き、 どうにか到着。 何のことは無い、国道沿いのわかりやすい所ではないか。

 ちょうど昼時でもあり、いき魚亭の店内は満員。 それもそのはず、回っているお寿司は我々が思っていたものとは大違い。 ネタは新鮮だし種類も多いし・・・もっとも値段も80円から700円といろいろだが・・・たらふく食べて二人で4500円。 回転寿司のイメージを大きく変えさせてくれ、大いに満足させてくれた。 また来るつもりなのか、大阪のおばちゃんはしっかりとサービス券を貰っていた。


 金沢兼六園の散策をほどほどに切り上げ、いよいよ能登を目指す。 能登有料道路の今浜インターチェンジからは待望のなぎさドライブウェイへ。 波打ち際の道路にはなっていない砂浜を走るのだが、良く締まった砂でタイヤがめり込むようなことは無く、何か不思議な気がする。

 天気は快晴。 海風は心地よく、はるか沖合いの船はシルエットのように浮かび、さざなみはキラキラと輝き、海鳥は波打ち際で遊んでいる。 もう最高の気分である。 やはりここでは、波しぶきをあげながら得意げに走っている4WDの車が良く似合っている。

 間も無く夕暮れ。 大きくて真っ赤な太陽が青い海を見事に変身させ、やがて水平線にやさしい茜色の余韻を残して沈んでいった。 言葉もなくじっと眺める二人・・・。

 明日も天気はよさそうだ。 ならば、今宵はおいしい魚でも味わい、明日は能登金剛から輪島まで足を伸ばそうではないか。


2000年9月20日(水)


 予報通りの快晴に元気いっぱい、北に向かって出発する。 断崖の急な歩道を下りた巌門から出ている遊覧船の船長さんは二人だけの乗客を快く迎えてくれ、朝のさわやかな空気と穏やかで澄んだ海、変化に富んだ能登金剛をたっぷりと味合わさせてくれた。

 世界一長いベンチに座って一休み。 ヤセの断崖で肝を冷やし、義経の船隠しを見物。 輪島の朝市には何とか間に合った。 特に買いたいものも無く、冷やかし気分で雰囲気を楽しみ、輪島の町も少しお散歩。 さて帰るとしますか・・・。

 「そや、もうちょっと先に千枚田があるわ。 そこまで走ろか。」

 千枚田はのんびりとした日本の昔話に出てきそうな棚田の風景である。 そしてそのすぐ先には美しく輝いているスカイブルーの空とマリンブルーの日本海・・・その両者が、こっちへおいで〜・・・と誘惑している。 こんな誘惑には特に弱い二人である。

 「もうちょっとだけ走れへん?」

 とカミさん。 そして、

 「気持ええわ〜。 最高やん。」

 となると・・・エーイ、ままよ〜・・・まだお昼前だし、もう少し行っちゃえ〜・・・。

 何も障害物が無く、海のすぐ際を走る曽々木海岸の快適な道・・・穏やかで真っ青な海・・・沖に目をやればくっきりと水平線が見えている。 もうたまらない。 こうなれば能登半島を一周するほか無いではないか。 覚悟を決めるとなお一層、青い空、青い海がいとおしく感じられる。

 少し山道に差し掛かった。 このあたりに禄剛崎があるはずだが・・・? だが、早くも下り坂が終わろうとしている。 どうやら標識を見落としたらしい。 まあいいっかぁ〜。

 バイキングの朝食を食べ過ぎたせいで空腹感がなく、その上快適なドライブに時間の感覚も麻痺していたようだ。 やがて珠洲市に差し掛かったところ・・・え〜? もう2時? そこで目の前の喫茶店に入り、軽い食事をとることにした。

 海に浮かんだ軍艦のように見える見附島、通称軍艦島と、鐘の音が波間に響く恋路海岸に立ち寄り、九十九湾の高い割にはつまらない遊覧船に乗ってブツブツ言っているうちに、早くも4時になろうとしている。 我々は能登半島を少し甘く見ていたらしい。 この様子では帰り着くのは何時になる?

 「もうしんどいわ。 どっかでもう一泊せえへんか?」

 「せやな〜。 無理せんほうがええやろし・・・。 そや、氷見で泊まらへん? 魚の本場やろ。」

 能登有料道路を利用し急いだが、到着は陽もとっぷりと暮れた6時半。 ああ、疲れた〜。 しかし、さすがは魚の本場である。 おいしい魚料理に満足、満足・・・。


2000年9月21日(木)


 三日目も晴れ。 なんと運の良いことか。 何がなんでも今日は帰らねば・・・。 だが、来た道を敦賀に向かって走るのはなんとも芸が無い。 そこで高岡から庄川沿いに国道156号線を南下することにした。

 荘川の緑色をした不思議な川の流れを楽しみながら、のんびりとドライブ。 カーブの多い登りに車の流れは良くない。

 相倉合掌集落を見学。 こういう建物とか神社仏閣には二人ともあまり興味は無い。 やはり山や川や海、そしてそこに咲く花たちだろ? また新緑に紅葉・・・これに勝るものはなく、やはり美しい自然が一番である。 ざっと一回りし、集落の入り口にある小さな食堂で軽い昼食。

 白川郷は丘の上から眺め、御母衣湖からひるがの高原を経て郡上八幡へ。 ガイドブックに載っている喫茶店を探して狭い町の中を迷いながらウロウロウロウロ。 そのレトロな喫茶店でコーヒーブレイクの後、一路帰りを急いだ。

 ほんの一泊、出来れば日帰りのつもりがとんだ結果になってしまった。 自覚症状は全く無いが、これでも立派な病み上りの身である。 明日から仕事のカミさんにも少しばかりきつかったかも知れない。 いや待てよ。 隣でほとんど寝ていただけ?

 知らない道を走ることは、また違った空気が感じられて良いものである。 この調子で日本国中、いろんなところを走れたら・・・。


Back  Home