旅 日 記
安芸の宮島 2010年4月5日(月)
我々夫婦は昨年、少しばかり遊びすぎたようだ。 まあ、病気のこともあり、行けるときに行っておきたいと言うばあさんの気持ちもわからないでは無い。 となると仕方のないところだろうか。
「今年は金もないことやし、どこも行かへんで〜。」
と言っていたのに、そこは桜が大好きなばあさんのこと、あちらこちらから桜の便りが届きだすと、
「どこか花見に行きたいな〜。」
しかし私はこの4月から1年間、自治会長と言う大役を仰せつかり、年度がわりの引継ぎ等でなにかと忙しい。 そんな身では予定など立たない。 桜の花もほとんどのところで満開となり、間も無く花吹雪が舞うことだろう。
「今年はもう無理やろな〜。」
ところが日曜日の夕方の天気予報で月曜日の雨の予報が良い方に変わり、曇り空だが午後からは晴れると言うではないか。 幸い月曜日は予定が無い。 となると最初で最後のチャンス? ならば出かけるしかない?
さて、どこへ行く? 同じ行くなら初めてのところ? そこで、昨年あたりからばあさんが一度行ってみたいと言っていた安芸の宮島まで遠出することにした。 火曜日はばあさんの通院日、水曜日も行事があり、当然日帰りである。
吹田インターチェンジから高速道路を利用して片道380Km、ゆっくり、のんびりと5時間ほど、久しぶりのドライブを楽しみながら廿日市インターチェンジを下りて宮島口に到着。 曇り空ながらわずかに青空も覗き、まずまずの天気の上、風もなくとても暖かい。
駐車場に車を預け、フェリーで宮島へ向かう。 穏やかな海が朝日に輝いている。 大鳥居が見えてきた。 干潮時らしく、鳥居の近くに人影が見られる。
8時20分、宮島桟橋に到着。 満開の桜と数頭の鹿が出迎えてくれた。
だが急な出発であったため、なにも情報がない。 たしか人力車があったはずだが・・・。 しかし観光案内所は9時かららしく、改札で聞いてもわからない。 しばしウロウロしていると、売店のおばさんが、
「いつも向いの山一別館のところにいるから、そこで聞いたら?」
時間は9時になろうとしている。 山一別館の女将さんは親切に電話をかけてくださったが、30分ほどかかると言う。 だが歩くのが困難なのだから仕方がない。 これは予約をしておいた方が無難だったらしいが、今回も突然の出発だったし・・・。
ちょんまげ姿のおじさんが人力車を引いて現れた。 夢俥髷一代の大橋さんと言うお方。 人力車も角館で乗ったものよりゆったりとしている。 聞けば3人乗りだそうな。
土産物店が並ぶまだ静かな参道を厳島神社へ向かう。 早速世界一と言う大杓子に驚かされた。 7.7m、2.5トンもあるそうだ。
人力車の上からも厳島神社が見えているが、この厳島神社での参拝は入り口から入って同じ入り口まで戻るのはご法度だそうな。 ところがばあさん、帰りは今通ってきた参道をゆっくり歩いてみたいと言う。 そこで参拝はあとにしてまずは案内をお願いし、そのあと奥の入り口で下ろしてもらうことにした。 社殿は板張りの平坦な道で、ばあさんが歩くのにも問題はないそうな。
厳島神社のいわれや歴史を聞きながら、宮島の奥の方まで案内していただいた。 だがそこは我々夫婦のこと。 右の耳から左の耳へ通り抜け?
朱塗りの社殿とは対照的に古い町並みも残り、見上げれば満開の桜の中に多宝塔の姿も拝め、宮島と言うところはなかなか風情のあるところのようだ。 また車夫の大橋さんは歩けないばあさんには格好の案内役で大助かりである。
鹿の姿も結構見られる。 我々は奈良市民ゆえ鹿など珍しくも無いが、ここでは鹿せんべいの販売を中止したそうだ。 本来は野生の動物。 自然に育つのが良いのではないかと言うことらしい。 また各家の郵便受けが高いところに設置してある。 紙を食する鹿から郵便物や新聞などの被害を受けないためだそうな。 大橋さんはそんな細かなことまで教えてくださる。
また、珍しい人力車だからなのだろう、たくさんの外国の人や観光客にカメラを向けられる。 その度に手で遮って断っていただけ、とても助かった。 角館で乗った人力車でも、また北上展勝地で馬車に揺られたときにも結構モデルにされ、あまり良い気がしなかったのは事実である。
弥山へ登るロープウェーのことも事細かく教えていただいた。 聞けば途中で乗り換える必要があり、その間が結構急な階段で足の悪いばあさんにはやはり無理らしい。 またたくさんの桜の花が見事に咲き誇っている多宝塔へはなだらかな階段もあるそうだが、無理は避け、下からの眺めで我慢することにした。
神社の入り口まで送ってもらい、まずは大橋さんおすすめの千畳閣へ少しばかりの階段を上る。 いろいろ歴史的にもいわれがあるのだろう、多くの絵馬が飾られた広い空間に張られた床板はピカピカに磨かれ、厳かな雰囲気が漂っている。 遠くに見えているのはお寺? この宮島には厳島神社だけではないんだ〜・・・。
改めて厳島神社へお参りする。 朱塗りの社殿は見事なたたずまい。 これが大鳥居も含めて土台の上に乗っているだけと言うからすごいの一言である。 7年前の台風の被害のことを思えばなおさらのことだろう。
たくさんの人で随分と混み合ってきた社殿をゆっくりと歩く。 青空もその範囲が徐々に広くなってきた。 朱色の社殿なのに荘厳な雰囲気をかもし出しているのがなんだか不思議な気がする。
社殿からも見えている五重塔と桜・・・これもいいね〜・・・。
車夫の大橋さんの話では、この社殿はやはり水が満ちているときの風情が良いらしい。 今日は大潮ではないが、午後1時ごろには海水も満ちて来るとのこと。 干満の差は4mに及ぶそうな。 干潮時には大鳥居まで歩くことができ、今朝フェリーから人の姿が見られたのであろう。 見れば満ちてくる潮の流れは結構早い。 大鳥居には小舟が近づいている。
社殿にもそれまで見えていた地面が見られなくなってきた。 結婚式が行われていたらしい。 遠くに白無垢姿の花嫁さんが見えている。 外国の人たちには格好の土産話になるだろう。
しかし、かなりのんびりと時間をつぶしたつもりだったが、まだ12時前。 潮が満ちると言うほどでもなく、その時間までにはあと1時間もある。 その上腹の虫も騒ぎ出した。 まあ、少しは水の上に浮かぶ社殿の様子も見られたことだし、このあたりで良しとするか?
人力車で通った道をゆっくりと歩いて戻る。 ばあさん、早速焼きたてのもみじ饅頭のお店へ。 縁台に腰をかけしばしの休憩。 もみじ饅頭など子供たちが修学旅行のお土産に買って来て以来だが、さすがに焼きたてはとてもおいしい。
両側にお店屋さんが立ち並ぶ参道のそぞろ歩きを楽しむばあさん、今度は牡蠣を焼く磯の香りに我慢できず、おいしそう・・・と一皿買って来た。 食事前なのに・・・。 なに? 別腹? お土産も買って、さあ、昼飯にしよう。
宮島と言えばやはり穴子かな? 参道にもたくさん食事どころはあったが、ここはやはり今朝ご親切にしていただいた山一別館だろう。
笑顔の女将さんとおいしい穴子丼に大満足。 当然のことだがばあさんは隣のお店で食後のソフトクリームも。 思い残すことなく宮島をあとにしたのは2時を過ぎていた。
満開の桜に包まれた宮島も素敵だったが、紅葉の宮島はどんな姿に変身するのだろうか? また訪れてみたいものである。
それにしても外国人の多いこと、多いこと・・・。 観光客の内、半分は外国人ではないだろうか? それほどに多い。 最近アジア系の観光客が多いのはどの観光地でも見られるが、この宮島では特に欧米の人たちが目立つ。 やはり広島市内の原爆資料館とのセットになっているからかな?
ならばと我々も帰り道広島市内へ。 原爆ドームは車の中から、そして原爆記念公園と資料館へ。 その昔、修学旅行で長崎の原爆記念館を訪れた日のことを思い出させてくれた。 私にはこの光景を気楽に写真を撮り、Webに公表するほどの図太い神経は持ち合わせていない。
ばあさんにしては結構な距離を歩いたようで少しお疲れの様子。 何事も無ければ良いのだが・・・。
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