旅 日 記
世羅の芝桜と菊桃 2014年4月24日(木)
昨年のこと。 富士芝桜からテレビ中継をやっていた。 富士五湖の一つ、本栖湖の近くにあるそうな。 富士山を背景にした見事な芝桜を見たばあさん、
「こら来年は行かなあかんな〜。」
「せやけどちょっと遠いで、日帰りはもう無理や。 それと見ごろはゴールデンウィークらしいし。」
二ヶ月ほど前のこと。 今度は新庄の凱旋桜と世羅の芝桜がセットになっているバスツアーの広告を見つけ、
「新庄てどこにあるん?」
「一番初めに斐伊川の桜を見に行ったとき、朝早ように休憩したやろ。 ホレ、若い女の子がダンプで仕事に出かける準備をしてたがな。 そこが道の駅メルヘンの里新庄や。」
「あ〜あんなとこかいな。」
2002年だからもう10年以上も前の話。 その時も凱旋桜は知っていた。 しかし咲くのが随分と遅いらしい。 世羅町の芝桜もテレビで見たことがあり、こちらも知っていた。 日本一の芝桜だそうな。 ほかにもいろいろな花が見られると言う。
世羅町は尾道から近く、高速道路も繋がっている。 距離にして吹田から260Km。 これなら日帰りも可能かな? とは言えもうそんなに興味も無く、行く気など全く無い。
とりあえずは旅の計画をたててみる。 これは今に始まった話ではない。 いや、現在ではこれが唯一の楽しみになってきた。 これなら日本国中、どこへでも今すぐ旅に出かけられる。
ところがこの4月から消費税が8%に上がり、諸物価も高騰。 それ以上に高速道路の料金は異常な値上がりになってしまった。 各種の割引制度が変更になったのがその理由。 特に影響を受けるのは平日昼間割引が廃止になったことだろうか。 そう言えば休日1000円と言うときもあったっけ・・・。 その恩恵を受けて東北へ、北海道へ、そして九州へ。 良くぞ行っておいたものだ。 なんだか懐かしく感じる今日この頃である。
なに? 吹田、尾道間が5790円? なんとお高いことよ。 尾道、世羅間は無料らしい。 深夜割引でも4050円だそうな。 5割引が3割引になっている。 もうこれでは遠くへ行けない。 もっともその予定も気持ちも無いけれど・・・。
高速道路を利用しないとなると、阪神高速(930円)、第二神明道路(320円)で西明石までは有料だが、あとは無料の加古川バイパス、姫路バイパス、太子竜野バイパスを利用し、国道373号線、179号線を走ると言う方法がある。 この道は何度か利用しているが、奈良から道の駅メルヘンの里新庄までは270Km。 5時間で走れるかな? ならば5時に出れば10時には着ける?
そして昼頃に新庄を出発して国道181号線で米子へ。 ところどころで有料、無料となる高速道路を三次まで利用。 三次から国道184号線で世羅まで行けば約200Km。
料金は1530円で済むが3時間近くかかるから観光できるのは3時間? 夕食を済ませて7時に出発、高速道路を利用すれば帰りは3〜4時間? 10時、遅くとも11時には帰り着ける? それでも高速料金は 8570円もかかる。 新庄から高速道路を利用すれば世羅までもう少し早く着けるかな? 蒜山から三次までは147Kmで3760円。 世羅までなら182Kmで4080円になる。
こんな強行軍はもう少し若いときならいざ知らず、今はもう無理な話。 だがこんなことを考えている時間が楽しい。 これからもこのように日本国中、あちこち旅を楽しむことにしよう。
ところが我が家のばあさん、
「桜はどっちでもええけど、芝桜はいっぺん見てみたいな〜。」
そう言えばまともな芝桜を見たことは無いかな? 2000年に三田で花のじゅうたんを見たのと2011年に熊本の大津町でロングステイをしたとき、佐伯まで足を延ばして空の展望所で見たわずかな芝桜だけ?
ここ最近、いや10日ほど好天が続き、暖かな日が続いている。 新庄の凱旋桜も満開を迎え、世羅の芝桜も咲き始めたようだ。 となるとばあさん、ウズウズソワソワ・・・なんだか落ち着かないご様子。
「なんとか日帰りで、楽う〜に安う〜に行ける方法、無いんか?」
そんなご無体な・・・。 だがばあさんの言うことだし・・・そこでまた練り直し。 芝桜は見ごろを迎えたようだが、凱旋桜は散り始めたようだ。 となるともう遅い? ならば世羅だけにするか? 西明石まで1250円、竜野まではバイパスを利用して竜野西から高速道路を利用すれば3620円だから計4870円で往復9740円、これが精いっぱいのところ。 しかし5時間はかかるだろうか。 今はもう日帰りするには遠すぎる。
「隣のねぇちゃんを誘うてもええか?」
「そらかまへんけど、大丈夫か? それと連れて行くんやったら、第二阪奈道路も含めて、みんな高速道路を利用せなあかんで〜。」
「高速料金とガソリン代、半分持ってもらうやん。」
早速聞いてきたばあさん、
「行くて言うてるで〜。」
訪ねてきた隣のおばあさん、いやねぇちゃん。 財布持参である。
「なんぼ払うたらええんや?」
「そんなん後でええ。 それより大丈夫かいな。」
「大丈夫や。 今は元気やし、なんもない。」
「ほな明日、6時に出よか。」
いやはや・・・。
9時半、世羅町の観光案内所に到着。 ほぼ予定通りである。 その案内所で観光チケットを購入。 500円券が6枚綴りで3000円。 3人でも利用可能だそうな。
行く予定の芝桜は800円、菊桃は700円。 そのどちらも一枚のチケットで入れる。 と言うことは3人なら6枚でちょうど良い。 合計1500円も得になる。
まずは芝桜見物へ。 花夢の里ロクダンと言うところ。 ところが観光案内所がある町の中心部からはとても遠い。 この道であっているの? 走っている車も少なく、少し不安になってきた。
だが到着した花夢の里ロクダンではたくさんの車と観光バス。 それもそのはず広い園内では芝桜が満開ではないか。 平日にもかかわらず結構な人出だが、何分広い園内。 混雑などとは縁が無さそうだ。
最初入った感じでは、なんと雑多なところなんだ・・・と思えたが、見どころでは見事な芝桜に感心させられた。 また菜の花が良いアクセントになっている。 隣のおばあさん、我が家のばあさん共々感激しきり・・・これは良いところへ案内できたものだと安堵する。
売店で購入したおにぎりと山菜寿司、そしておはぎで早い昼食。 据えつけてあるテーブルで食べていると、
「こんなところで食べたらおいしいやろね〜。」
と見知らぬおば様の二人連れ。
「ええ、とてもおいしいですよ〜。」
入園料、一人800円が500円で入れたから300円もお得、ということはほぼ昼食代が浮いた勘定? だから余計おいしく感じた?
ところが地道に坂道・・・車椅子を押すのに一汗二汗。 だが何分この花である。 たっぷりと楽しめたから、まあ、いいっか。
なに? 芝桜にソメイヨシノ? いや山桜かな? 北海道の映像で見たことがあるが、ここでも見られるんだ〜・・・。 これはラッキー!
次に向かったのがラ・スカイファーム。 しかし30分はかかったかな? ここも世羅町? なんと広いことよ。 もっとコンパクトに見どころが集まっていると思っていたものだから・・・。
入口の受付で聞いてみた。
「車椅子で大丈夫ですか?」
「行けないことはありませんが・・・ちょっと大変かも・・・。 でもこことここだけは是非見て欲しいのです。」
と簡単な地図と詳しい説明を受けていざ出発。 ところがいきなり急な下り坂の地道が現れた。 これ・・・大丈夫かな〜・・・。
その心配を振り払うように見事な菊桃が現れた。 菊桃は何度か見たことはあるが、これほどとは・・・。 これぞまさに桃源郷である。 菊桃を中心に、他の花桃を含めると1500本以上あるそうな。
レンギョウは見ごろを過ぎていたが、菜の花の黄色、白い雪柳・・・そこへ菊桃のピンク、いやローズ色、また白い花桃まで・・・。 これは福島の花見山と比べても見劣ることは無い。 それほどに素晴らしいところである。
ところが車椅子を押すには苦難な道であった。 これはまるで草が生い茂ったあぜ道ではないか。 教えてもらった見どころまで到着できるの?
これはもう無理かな? と諦めかけたところで、可愛い孫娘を連れて見回り中のお方に出会い、励ましていただいた。
「ご案内しますから・・・。 ご主人はまだ若いから大丈夫でしょう。」
などとおだてられてその気になった? この農場の女主人だそうな。 苦労話などを聞きながらがんばって車椅子を押す。 汗が滴り落ちる。 ふぅ〜、でもこれって尋常な道ではありませんが・・・。
そのご褒美が現れた。 見下ろす谷には少し遅いが山桜も見られ、その先、もう少し登れば菊桃のじゅうたんが見下ろせる。 これはもう言葉にならない。 うっとり・・・。 疲れも一気に吹っ飛んだ。
そうか、娘さんらしい受付の人と、案内してくださったご主人もこれを見てほしかったのか。 丹精こめて育てたものだろうし、その気持ちは十分に理解できる。
出口近くでは一本の石楠花の木。 別れを惜しんでくれているのかな? 充実感たっぷりの我々を見送るように咲いていた。
これで予定終了のはず・・・なのに・・・。 なに? チューリップも見るの?
「チケットはもう無いで〜。」
「800円、払うたらええんやろ?」
そこですぐ近くの世羅高原農場へ。
今朝方、世羅観光案内所での話。
「他に見どころはありますか?」
と聞いたのがまずかった。
「明日あたり、チューリップも見ごろになるようですよ。 スカイファームから車で2〜3分のところにあります。」
それを聞いたばあさんが黙っている訳が無い。 そこで寄ることにしたのだが・・・。 なに? 入場料、800円が600円で良い? と言うことはまだ咲いていない?
やはり少し早かったようだ。 広い園内に咲いているのは半分ほどかな? これでは明日、見ごろにはならないだろ? 案内所のお嬢さん、嘘を言ってはいけませんね〜。
しかし遠くには結構咲き揃っているところもあるようだが・・・。 でもあまりにも遠い。 それほどに広いところ。 これが全て咲いたらどんな風景になるのだろうか。
のんびりと車椅子を押して散歩をした後、花を愛でながらコーヒーをいただき、しばし休憩。 ばあさん、今日始めてのソフトクリームに満足そう。 太陽も随分西に傾いてきた。 ならばそろそろお暇しますか。
往復全て高速道路を走らせて貰い、楽をさせていただいた。 三木サービスエリアで夕食をとり、8時過ぎ無事帰着。 隣のおばあさん、いやねえちゃん、最後まで元気だったようで一安心。 ホッ!
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