◇立山 PART-1 立山 2000. 10. 17 (火)


 あちらこちらから紅葉の便りが目に付きだし、二人とも何か落ち着かない。 奥方様は月に一度の三連休。 黒部渓谷のトロッコ列車と立山への一泊旅行を計画し、深夜出発。 しかし、18日の天気予報が良くない。 まして前日に問い合わせたところ、黒部渓谷の紅葉の見ごろは月末ごろらしい。 ならば先に立山へ行こう。

 深夜の国道を快走。 立山ケーブルの駐車場には、ようやく明るくなり始めた5時過ぎに到着。 少し早すぎたか? 7時発の一番ケーブルに乗り、美女平で高原バスに乗り換え。 結構人は多い。

 8時30分、室堂到着。 天気は晴れ。 思ったより寒くない。 雄山、剣岳、大日岳。 壮大な景観を前にして、40年ほど前の5月にスキーを担いで登った時のことが思い出される。

 現在では4月20日に室堂までバスが開通するが、当時は美女平からほんの少しだけバスが通れるように除雪され、そこから弥陀ヶ原までは雪上車で荷物だけを運んでくれた。 その後は自分の足だけが頼り。 天狗平山荘で一泊、今はなくなってしまった地獄谷の房治荘で二泊した。 一面真っ白な世界と、快晴の雄山頂上からの眺めは、いまだにまぶたに焼き付いて消えない。 快晴の次の日の大嵐と猛吹雪。 命からがら下山したことも、今となっては良い思い出である。

 みくりヶ池、みどりヶ池をのんびりと散策。 大きくて美しい、そして荒々しい山々を目の前にし、さわやかな風がなんとも心地良い。 記憶にある景色とは、また違った立山がそこにある。 雪山も素晴らしいが、これはこれでまた良いものだ。

 室堂ターミナルで小休止。 40年前に来たときには、このような立派なホテルはまだ出来ていなかった。 黒四ダムがちょうど完成したころか。 その後アルペンルートが貫通。 世の中の進化は驚愕に値する。 そして、今なお加速しているように思われる。

 心はずむ雰囲気と青い空。 それと、おいしい空気。 このままバスに乗るのも味気ない。 ならば、天狗平まで歩いて下りることにしよう。 途中、急な階段もあり、思ったより時間がかかったが、何度も休憩を取りながら、ゆっくり、ゆっくり。

 大きなリュックを担いで登って来る登山者。 そうだ、ここは若かりしころに憧れ、槍ヶ岳、穂高岳をはじめ、何度か登った山と一緒の北アルプスなんだ。 大きな音を立てて走っている高原バスを見ていると、そんなことすら忘れてしまっている我が身がなぜか恐ろしい。 当然、室堂までならハイヒールで来られる。 これで良いのか? いや、現代に生きるものにとっては、これはこれで良しとしなければならないことであろう。

 やはり下りは足腰にこたえる。 いや、ただ年とともに体力が落ちているだけ? 周りの景色が清涼剤となり、はえ松に負けじと必至に生きている小さな草や木や花に励まされ、やっと天狗平山荘に到着。 見上げれば険しくも美しい剣岳。 やはり美しい山は心を和ませてくれる。

 弥陀ヶ原は紅葉が真っ盛り。 こういうのを錦絵と言うのだろうか。 まるで絵葉書の世界である。 たくさんの色を使って製作した貼り絵のような、見事に色づいた山々をめでながら、弥陀ヶ原ホテルでのおいしい昼食。 これ以上ない贅沢に幸せを実感する。

 すっかり曇り空になったなか、称名の滝の駐車場からゆっくり歩くこと30分。 見上げるほどの高さから流れ落ちる称名の滝は圧巻である。 時代物のバカチョンカメラには全容が入りきらない。 さすが日本一。 風に乗ってふりそそぐ霧が、汗ばんだ体を心地良く冷やしてくれる。

 盛りだくさんの充実した一日の疲れが、なんとも爽快に感じられる。 予報通り、小雨が降りだした。 ゆっくりと体を休めることにしよう。