◇紀伊半島一周 2001. 9. 19 (水)


 昨日の夕方、一日中家事をしていた奥方様が 「明日は天気が良さそうだから、どこかへ朝日を見に行こう。」 と言い出した。 朝日を見るなら、初日の出を見た伊勢の朝熊山か、自然が作った岩の芸術に驚いた鬼ヶ城がある熊野灘? どちらにせよ当然夜中に出なければならない。 ならば一度、潮岬にも行ってみようではないか。

 日付が変わるころ出発。 吉野を回ったほうが早いが狭い山道でもあり、深夜のため無理は止そう。 名阪国道から松坂へ。 だが大台町を過ぎると霧。 それもだんだん濃くなる。 幸い通行量は多くない。

 尾鷲が近くなりようやく霧から開放されほっと一息。 すると、今度は空から星が降ってきた。 真っ暗な海のほうへ少し寄り道。 となりで熟睡中の奥方様をそっと起こす。 満天の星空とはこういうことを言うのか・・・。 生まれてこの方、こんなにたくさんの星を見たことがない。 星には全く知識もなく、興味もない二人だが・・・。 言葉もなく・・・。

 熊野を過ぎ空が白みだした。 道の駅パーク七里御浜へ車を置き、国道を歩道橋で渡り、広い浜辺で日の出を待つ。 遠くのなぎさに小さく見える人の姿。 10人ほどいるようだが? どうやら釣りをしているらしい。 波打ち際まで行くにはあまりにも遠すぎる。 その上小石まじりの深い砂。 行ってみたいが・・・。 かなりしんどそう・・・。

 海は穏やからしく、波の音はほとんど聞こえない。 上空には雲ひとつなく、徐々にオレンジ色に染まりだした。 水平線の近くにだけ集まっている雲の帯も赤みを帯び始めると間も無く、わずかな雲の隙間から優しい色のお日様が頭を持ち上げた。 何も音は聞こえない。 だが、どこか遠くで壮大なオーケストラの音楽が聞こえていそうな雰囲気。 その音楽がクライマックスを迎えるように太陽も大きく膨らみ、明るさも増してゆく。

 顔を出してから丸い太陽に成長するまで意外に早い。 母なる海を離れた太陽は、少し上で待つ雲の影に早くも隠れてしまった。 雲の帯がシルエットのように浮かび上がり、光の縁取りが鮮やかに輝きだす。 再び顔を覗かせた太陽は、今度は何も邪魔者がいない大空へ向かって、今日一日の長い旅立ちへと登り始めた。

 新宮を経て那智の滝へ。 駐車場には早くも一台の観光バス。 我々と同じように、夜行で来たのだろうか?

 大きな木が多く、昼間でもほの暗そうな森。 早朝ではなおさら暗い森の中へ下りの階段が続いている。 荘厳な雰囲気の中の社務所では早くも参拝客の受け入れ体制を整え、点されたローソクの明かりがより一層、気持ちを引き締めてくれる。

 正面の鳥居のはるか上には朝日に照らされた明るい緑。 そこから鬱蒼とした谷の大きな岩に向かって太い水柱。 そしてそれが躍動している。 先人がこの滝をご神体にと決めたことに共感するものがあり、当然のことのように思える。

 那智山スカイラインは先日の台風の被害のため通行止め。 勝浦漁港はちょうどセリの時間。 鯨の町、太地町へもちょっと寄り道。 当然まだ各施設は開いていない。 見えるのは鯨のモニュメントだけ。

 町からのんびりとした畑の中を10分ほど走ったところにある落合博満野球記念館は、何か別荘のような建物。 コスモスが咲いている広場では、早くもゲートボール。 さすが早起きのお年寄り。 

 古座川峡への標識を見てとっさに右折。 周りの風景に溶け込んだ古座川を気持ち良くさかのぼり、大きな赤茶色の一枚岩を見て引き返す。

 今にも海に落ちそうな波打ち際ギリギリの国道。 台風の際には必ず中継される場所は、ここに違いない。 これなら台風でなくとも、少し海が荒れれば波を被ることは確実である。

 個性豊かに並んでいる橋抗岩には、雲ひとつない青い空と穏やかなコバルトブルーの海が良く似合っている。 ほどなく串本。

 本州最南端、潮岬。 目の前の太平洋はとてつもなく大きくて広い。 これは当然のことか。 太陽に照らされた海はキラキラと輝いてまぶしい。 はるか遠くには大きな貨物船が行き交い、すぐ目の前には漁船も多く、なかでも三隻の漁船が船団を組み、丸く円を描くように漁をしている光景には興味をそそられる。 

 広い芝生で犬と戯れている幸せそうな家族連れ。 ヨチヨチ歩きながら元気なかわいい女の子。

 串本の町と美しい海岸線が眺められる絶好のポイントの道路際に車を止め、うっとりと至福の時間。 そこへルームミラーに観光バスの姿。 仕方なく走り出すと・・・。 何のことはない。 観光バスも止まっているではないか。 ちょっぴり損した気分。

 まだ新しく美しい橋を渡って大島へ。 しかし、見所は特になく・・・?

 串本でお魚の昼食。 しかし・・・? 日本海の魚には勝てない?

 ところどころで見え隠れしている枯木灘を眺めながら周参見を過ぎ、白浜へ。 何度か来たことのある三段壁と千畳敷の見物をほどほどに切り上げ、一汗流そうと白良湯へ。 少し塩分を含んだお湯はサラッとしていて、良く温まる。 小さな窓から見える白良浜の白い砂浜が、夕日に輝き美しい。

 田辺ではほとんどのガソリンスタンドに86円の看板。 奈良では95〜6円、大阪は100円のところも。 石油コンビナートが近いから?

 北に進むに従い、車が徐々に増えてきた。 ついには渋滞のところも。 海南の町は早くも暗闇の中。 奈良県はもうすぐだが、奈良市までは遠い。