◇東北 PART-4 十和田湖 八幡平 乳頭温泉 2002. 10. 9 (水)


 まだ夜が明けやらぬ5時起床。 出来るだけ音を立てぬよう静かに身支度をする。 夜半、雨が降ったらしいが今はやんでいる。 夜が明けるのを待って宿を飛び出した。 朝食までに早朝の十和田湖を一周する計画である。

 まずは昨日来た道を休屋まで。 続いて1011mの御鼻部山へカーブの多い坂道を登って行く。 高度が上がるにつれ、ブナの森が徐々に黄色に変わってきた。 澄み切った空気のせいかその黄色が新鮮に感じられ、とても鮮やかで美しい。 ついには周り全てが黄色の世界になってきた。

 真っ赤なもみじも当然華やかで美しいものだが、この黄色は落ち着いた中にもなにか晴れやかな感じがして、とても良い雰囲気だ。 ところどころで木の間越しに、早朝の穏やかな美しい十和田湖が見え隠れしている。 早起きしてよかったァ〜・・・。

 だが御鼻部山展望台が近くなるとガスがかかりだし、しっとりと美しい森を白いベールで魔法をかけるように包んで行く。 風は全くないがかなり寒い。 霧の中に黄葉した樹々が浮かび上がり、とても幻想的。 鳥の泣き声以外、物音は何もない。 かなり良い雰囲気だが、裏を返せばこれは十和田湖が全く見えないと言うことではないか。

 真っ白な空間の中の展望台は、なお一層寒さを覚える。 しばらく待ったが霧は晴れそうにない。 朝食の時間もあり、そんなにゆっくりもしていられない。 どうも今回の旅は肝心なところでガスに邪魔をされる。

 静かな森を下って行くと霧も消え、徐々に緑の世界へ逆戻り。 紅葉は高いところから順番に下りてくる・・・と実践教育をしてくれている? ようやく湖畔沿いの道へ。 アレ〜、滝ノ沢展望台は? どうやら先ほど通った交差点を黒石方面へ行ったところにあるらしい。 だが、だいぶ戻らねばならない。 まあ、いいかあァ〜・・・。

 早朝の十和田湖は静かで穏やかな湖面がまことに心地良い。 当然ながら人影もなく、周りもあくまで静寂である。 わずかに吹く風が、美しい緑の木々を揺らしているだけ。 御鼻部山の上だけにかかった雲をかき分けるように、顔を覗かせた太陽がまぶしい。 これに答える湖の水は、キラキラ、キラキラ・・・。 その軌跡をたどってゆけば、もう一度、山の頂まで登れそうだ。

 宿を出て間もなく、小さな喫茶店の前にアップルパイの大きな看板。 これなら誰にでも目に入る? だが肝心のパイは8時30分ごろに近くのホテルから届くらしい。 あと10分ほどあるが、おばはんがどうしても食べたいと言う。

 主人が取りに行ってくれたが、手ぶらで帰ってきた。 今日は予約が多く、次の焼き上がりになり遅くなる? そんなァ〜・・・。 だが穏やかな十和田湖を眺めながらのモーニングコーヒーもまた乙なもの?

 最後の展望台の発荷峠から十和田湖に別れを告げ、樹海ラインを経て小坂町へ。 長らく森の中ばかりを走っていたせいか、小さな町並みだがとても新鮮で大都会のように思える。 家の屋根は片方は大きく、片方は小さく・・・それも皆同じ方角を向いている。 これは、やはり雪対策? 国道を鹿角市へ。

 立ち寄った道の駅かづので、おばはんはまたお土産を物色。
「なに〜? あの人のお土産はこれに変える〜? ならば、前に買ったのはどうするのよ〜。」
「余れば自分で食べればいいでしょう?」
「・・・、・・・。」 なるほど。 そういうことだよね〜。 ん? なんだか少し変?

 この様子を見ていた若い店員さんは、優しく微笑んでいる。 丁寧に商品の説明をしてくれ、親切でとても可愛い。 帰り際、「道中でお食べ下さい。」 とさりげなく饅頭を二つ持たせてくれた。

 小学生のころ、良く遊びに行った父親の姉の嫁ぎ先で、その叔母が帰り際、そっと握らせてくれたお菓子や小遣いのことをふと思い出す。  この地方には、そんな懐かしい昔の暮らしぶりがまだ残されているのだろうか?

 そう言えば鯵ヶ沢の青年と言い、津軽こけし館の人たち、奥入瀬渓流センターの店員さん、それに加えこの道の駅かづのの娘さん・・・。 いずれも接客の教育だけでは身につかない何かを持ち合わせている。

 持って生まれた優しさ、人を思いやる心。 現代社会、特に都会ではもはや死語となりつつある人間本来のあるべき姿・・・。 ほのぼのとうれしさがこみ上げ、また懐かしく、心が締め付けられる思いである。 この旅、最大の発見? そして、最高の収穫?

 トランクの中には、大きな紙袋の仲間がまた一つ増え、いよいよ住宅難になりつつあるようだ。

 奥方様のリクエストにお答えして、もう一度八幡平アスピーテラインへ。 まずは大沼の駐車場。 確かここは先を急ぐあまり、通り過ぎたところ? だが素晴らしい景色ではないか。 大きな池の周りを見事に紅葉した山が取り囲み、柔らかな光を浴びて輝いている。 ここだけでももう一度来た甲斐がありそうだ。

 空には雲も浮かんでいるが、おおむね大きな青い空。 だが山頂付近だけは黒い雲に覆われ、今にも雨が落ちてきそうな雰囲気。 今日はまだ半分くらい空いている駐車場のおじさんは、「大丈夫だァ〜」 とあんに止めなさいと促しているようだが?

 その手には乗らないぞ〜。 何も無理をしてまでハイキングをすることもないしね〜。 それよりもドライブの楽しみを知っているものね〜。 ゴメンネ、おじさん。

 到着した御在所から見上げると、やはり山頂にだけ黒い雲。 相変わらずの美しい紅葉を眺めながら、ジャがバター、牛肉の串焼き・・・などなど。 もちろん奥方様はソフトクリームも。 このおいしさにはかなうものがなく、これを昼食にしちゃえ〜。

 今日はここでUターン、再び山頂へ。 先日よりは天気が良く、周りの山や谷も美しい紅葉とともに輝いている。 しかし、大きな岩手山の頂上付近の雲だけは、なぜか動かない。

 山頂から少し下がったところの藤七温泉彩雲荘で一風呂。 ここは標高1400m、東北最高地点の温泉らしい。 半分雲に隠れた岩手山の山裾に広がる深い谷を眺めながらの露天風呂。 青い空にさわやかな風。 いくら入っていても飽きることがない。 それに加え、先客二人との楽しいおしゃべり・・・。 つい長風呂になり、今日は奥方様を待たせてしまった。

 先日の後生掛、今日の藤七、二つのひなびた温泉。 それと八幡平の大自然。 十分に堪能。 これでもう思い残すこともない。 さあ、次の目的地、田沢湖を目指そう。

 奥方様は湯上りのほてった顔をして、何だか眠そう。 しばらくしてウトウト。 ついにはグーグー。 しかし、周りの紅葉は三日前よりは確実に進み、より美しく輝いている。 その上この旅、最後の紅葉となりそうだ。 かわいそうだが・・・。 オーイ、起きろ〜。

 玉川温泉も少しばかり探索。 橋を渡ると右に新しい建物、左には少し離れた川沿いに赤い屋根の古い建物。 広い駐車場はほぼ満車。 ゴザを持った人などが行き来している。

 あとで聞いた話では、この温泉は強酸性でラジュームの含有率が高く、ゴザを敷いてのオンドル式をはじめ、いろいろな入浴方法があり、大病の人が治ったという話が広まって大変な繁盛振りだそうだ。 新館は料金が高いのと温泉場まで遠く、比較的予約は取りやすいが、旧館は予約が難しく、日帰り入浴も朝早くから並ばなければならないらしい。

 田沢湖は湖岸をドライブ。 少しだけ雰囲気を楽しみ先を急ぐ。 可愛い建物の山のはちみつ屋で蜂蜜のお土産もゲット。 次は乳頭温泉郷へ。

 今日の宿の休暇村田沢湖高原も温泉だが、ここまで来たからには話のネタに超有名な鶴の湯温泉にも入ってみたい。 バス道からそれ、山深い森の中へ。 それも途中から地道の狭い道。 なのに到着した鶴の湯温泉は、車も人も一杯じゃん。 もう夕方の4時過ぎだよ〜。

 かやぶき屋根の宿泊棟の奥に男女とも3〜4箇所の浴場があるらしいが、少し離れているらしく、古い小屋のような建物の周りを素っ裸の男性やバスタオルを巻いた女性の歩いている姿が丸見えだ。

 テレビや写真でよく見る露天風呂へ。 中は狭い脱衣所と、そのすぐ隣に2〜3人用の小さな湯船。 そしてその奥には壁も扉もなく吹き抜けで、打たせ湯と露天風呂が見えているが・・・。 これでも一応内湯かな?

 露天風呂の乳白色のお湯と周りの風情は、あれだけ映像などで何度も見せられていると、何だか初めてのような気がしないから不思議だ。 少し温めのお湯と打たせ湯を何度か往復。 のんびり、ほっこり。 秘湯ムードたっぷりだが、これだけ人が多いと・・・。 何か宿泊客がお気の毒に感じる。

 奥方様は藤七温泉に入ったのがほんの3時間前でもあり、何かのぼせたような疲れた顔をして出てきた。 昨日あたりから車の中は硫黄の臭いが消えず、お互い手を鼻にかざして苦笑い。 しかし、これだけ毎日、朝、昼、夜と温泉につかっていると、奥方様の荒れた手がスベスベ、お肌もツルツル。 やはり温泉の効用は素晴らしいものがあるのだろう。

 そう言えば鶴の湯温泉では、料金を払っただけで何もくれなかった。 他の所は入浴券とか領収書とか貰ったが・・・。 会計処理や税務処理はどうなっているの? あれだけの人数となると、例え400円でも馬鹿にならない・・・と他人の懐勘定に花が咲いているうちに休暇村田沢湖高原到着。 鶴の湯温泉とは正反対の、まだ新しくて白いきれいな建物である。 付近の紅葉はまだ始まったばかりのようだ。

 夕食はおばはんが大好きなバイキング。 何度も、何度も・・・まだおかわりするの〜? ちょっと食べすぎじゃない?

 たまたま隣の席に座り合わせたお方は、日立市から来られた兄弟夫婦の4人連れ。 我々より少し年上だが、気さくな方達で仲良くおしゃべりの仲間に入れて頂いた。 ついにはビールまでご馳走になり楽しいひと時に酔いしれる。


東北各地には2007年10月に再訪。 その模様と写真は
みちのく夫婦旅 の各ページとそのスライドショーでご覧ください。