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◇信州 PART-1 高ボッチ 蓼科 春日渓谷 美ヶ原 2003.10.16(木)


 奥方様が連休である。 天気予報では絶好の行楽日和。 一日目にたまった家事を済ませ、二日目に紅葉狩りへ行くから調べておいて・・・と言われていたのだが、この時期紅葉前線はまだ近くまでは届かず、日帰りとなるとかなり難しい。

 こういうときにはやはりインターネットが威力を発揮する。 紅葉情報を頼りにいろいろ検索。 ここ最近気にかかっている霧が峰ビーナスラインから美ヶ原高原にも行ってみたいが、日帰りには少し遠い? 御嶽山ぐらいならなんとかなるか? と言うことで赤沢自然休養林、御岳ロープウェイ、開田高原へ行くことに決定。

 ところが15日午後の6時ごろ、朝日新聞のホームページで御岳ロープウェイでの乗客二人が死亡する大事故の記事を発見。 これが一両日ずれていれば我が身? 事故の当事者には誠にお気の毒なことであり不謹慎ではあるが、明後日行こうとしている者にとってもこれは一大事である。 さてどうする?

 ならば思い切って今夜から出かけるか? 奥方様、大いに悩み、あわてて銀行へ。 今は便利になったものだ。 この時間でも金がおろせる。 急いで準備。 防寒着も引っ張り出さなければならず奥方様大忙し。 それを横目に私は仮眠。 夜中の2時に出発しよう。

 ある程度下調べはしてあったにせよ、準備不足は否めない。 茅野へ出る前に高ボッチ高原へも? オーイ、1時に出発するぞ〜・・・。 これでは出かける前から疲れてしまうじゃん。 トホホ・・・。

 中津川4時。 ここでも大いに悩まされる。 塩尻まで高速道路を利用すればご来光に間に合うかも? だが見られる保障は無い。 雲海だけでも見ることができれば良いとするか? 隣で就寝中の奥方様を起こす訳にもいかず・・・。 ここは通行料を節約するか〜。 どうやら大蔵大臣のケチケチ精神が、我が心にも浸透してきているらしい。

 高ボッチ6時15分。 だが、うっすらとガスがかかっている。 かなり寒い。 そう言えば途中の奈良井宿では温度表示が1度を示していた。 しかし山頂の駐車場へ着くころには、高く上った太陽の光に溶かされるように霧も晴れ、真っ青な空。 雲一つ見られない。 見事な雲海の彼方に北アルプスの峰々・・・。

 槍、穂高・・・、あれ〜、あれは? 少し小さめだがブロッケン現象だ。 随分昔に見たことがあるが、これは珍しい。 慌ててカメラを取り出しているうちにはかなく消えてしまった。 残念! だが始めて見た奥方様は大感激している。

 改めて、南から御岳、乗鞍、穂高連峰、槍、常念、爺ヶ岳、鹿島槍、白馬三山。 案内板を見なくてもある程度はわかる。 素晴らしい眺め。 来てよかった〜。

 山頂まで400mの標識に誘われ、枯れた草に下りた霜がお日様の力で溶かされ、その水玉たちがキラキラと輝いて歓迎をしてくれる中、なだらかな斜面をゆっくりと登ってゆく。 ピンと張り詰めた空気が体をシャキッとさせてくれる。 見事な雲海の上に頭の先だけ覗かせた小さな富士山。 右の方には大きな御嶽山。 八ヶ岳も大部分が雲に隠されている。 雲の隙間からかすかに諏訪湖の姿・・・。


 三脚を据え、大きなカメラを構えていた三人の先客は早くも帰り支度。 「もう少し早く来れば、ブロッケン現象が見られたのに・・・。」 
「下の駐車場から見ましたよ〜。」 
どうもご親切様・・・。 



 再び駐車場へ戻ると雲海はほとんど消え、北アルプスがくっきりと眺められる。 わずかな時間だが、太陽光の威力は計り知れないものがあるのだろう。


 茅野からビーナスラインへ。

 蓼科湖の周りは見事な紅葉。 真っ青な空。 そして青い水が澄みわたる湖岸では、かえでの葉が朝日に照らされ真っ赤に燃えている。 

 真向かいの白いホテルの後方には見事に色付いた山・・・。 それらが鏡のような湖面に逆さまに映し出され、まるで絵葉書の世界。

 デジカメだから遠慮なくパチパチ、パチパチ。 ようやくデジカメにも慣れ、魅力がわかってきたようだ。

 美ヶ原の王ヶ頭ホテルへ泊まりの予約。

 道中の景色を楽しみながらピラタス蓼科ロープウェイへ。 山麓駅の周りは少しばかり晩秋の気配。 上の方はもはや遅いかもしれない。 帰りかけている人に上の様子を聞いてみる。 「美しいですよ。」 では登ってみよう。

 観光バスが着いたところらしくロープウェイは超満員。 付近は針葉樹林帯でダケカンバの葉が色付き、少し地味な感じになっているようだ。 周りの山はまさに秋本番。 上を見ればシラビソの濃い緑の林。 それが部分的に枯れはて白と緑のまだら模様になっている。 縞枯れ現象と言うらしい。


 到着した山頂駅は、目の前が黒い溶岩の台地と濃い緑のシラビソが整然と並ぶ林の坪庭で、下界の風景も全く見えず、秋を思わせるものは何も見られない。


 この坪庭は散策コースもあり、これはこれでまずまずの趣だが、我々は今回紅葉を求めてやってきた。 少しばかり肩透かしを食らったようで、何か裏切られた気分がする。 ここを散策するよりももっと行きたいところがある。 時間ももったいない。 早々に切り上げ、次のロープウェイで下りることにした。 これでこの料金は高い? おばはん、ブツブツ。 

 やがてスズラン峠。
「スズラン峠と言うからにはスズランが咲くの〜?」
「咲こうが咲くまいが、もうスズランは絶対見に行かないぞ〜。」
「でもたくさんあれば・・・。」
スズランにはあれだけ痛い目にあっているというのに、おばはん、まだ未練があるらしい。


 美しい周りの紅葉にしっとりと溶け込んだ女神湖から、幸運にも無料開放されている夢の平スカイラインへ。 少し登ったところから真下に女神湖。 遠くには小さな白樺湖が眺められる。 


 御泉水自然園へ寄ってみる。 ここでも地味に色付いた木々と残された緑が勢力を分かち合い、うまく調和が取れた静かな森の中の散歩となったが、よく見ればいろいろな植物も豊富で、花が咲き、美しい緑の季節のほうが魅力的なのだろう。 

 やがてドラマチックな紅葉の舞台の幕開けである。 カーブを曲がるたびに舞台が変わり、次の場面が展開される。 そのストーリーはつながっているようであるが、全く別な場面にも感じられ、見ている者に驚きと感動を与え、また次の場面への興味をそそらせてくれる。


 目の前の主役を引き立てる遥かな遠景。 下に見えている町は何と言う町なのだろう。 あまりにも素晴らしい舞台にスローモーションで再現して欲しく、走る速度も遅くなり、ついには舞台を止めてしまった。

 それが数多く何度も何度も繰り返され、シャッター音が鳴りやまず、一向にドラマが前へ進まない。

 やっと大河内峠に到着。 ここまでどのくらい走ったのだろうか? たびたび止まったせいか全くわからない。 かなりの距離があったとも思えるが、案外近かった?

 この峠からは登山道もあり、20台ほどの車が駐車してあるが、道中ではあまり会わなかった。 これほど紅葉が美しいところもそんなにあるものでは無いが・・・。 それなのにこの車の量。 信じられない気持ちだ。


 実を言えば私もつい2〜3日前までは知らなかった。 これもインターネットのおかげである。 ガイドブックだけではわからない世界を教えてくれる。 これからは皆に知らしめることとなり、人も車も増えていくことであろう。 いや、このまま静かなところであって欲しいとも思えるが・・・。

 峠からは簡易舗装のひどいデコボコ道。 やがて第二幕が始まった。 もはや何も言えない。 ただ口をポカンとあけ、何も考えることが出来ず・・・。 またも何度も車を止めキョロキョロ、キョロキョロ。

 容量が四百数十枚のCFカードの残り枚数が100を切っている。 いくらデジカメとは言えこれは撮りすぎ? またも奥方様は停車を命じた。 これではいよいよ前へ進まない。

 この第二幕の背景には遠景ばかりかゴツゴツした岩場まで現れる。 これ以上なく変化に富んだ風景と素晴らしく色づいた紅葉・・・。 日本はなんと美しい国なのだろう。 この幕もこれだけ舞台が止まると、本日の終演に間に合うのだろうか? 

 ようやく春日渓谷も終わりに近づいたようだ。 このまま先へ進む予定であったが、もう一度この素晴らしい世界を味わってみたい。 ならばUターン。 だが今度は絶対に車は止めないぞ〜。 事実このままでは予約した美ヶ原への到着が遅くなりそうな気配だ。 昼食も運転しながらパンとおにぎりで済ませたと言うのに・・・。

 珍しいことに今日はソフトクリームにもケーキにもお目にかかる機会が無かった。 「おいしいケーキが食べた〜い。」 と奥方様。 ドライブの疲れも癒すべく白樺湖あたりでちょっと休憩したいが、その時間すらもったいない。 それより少しでも早く美ヶ原に到着しなければ・・・と言うことでやむなく通過。 おばはん、少しご機嫌ななめ?

 霧が峰ビーナスラインを登り始めると白樺湖の全景と色付いた周りの山々が美しく見えてきた。 木が全くない車山の付近はススキが風にそよぎ、なだらかな斜面を覆っている。 

 八島湿原は青い水を湛えた小さな池と褐色の草原が夕日に輝き、とても美しい。 お日様が西に傾き、周りの山も日の陰に隠れることが多くなってきた。 と言うことは見た目には山の色付きも冴えず、ただひたすらに先へ進む。 


 無料開放された三十数Kmのビーナスラインは、これはこれなりに格好のドライブコースだが、昨年までは全線の通行料2900円。 これはやはり高い? いや、新緑のシーズンなどはもっと素晴らしく値打ちも増す?

 美ヶ原が近くなり、周りの紅葉も一層美しくなってきた。 4時過ぎ山本小屋に到着。 しばらく待って迎えのマイクロバスで王ヶ頭ホテルへ。

 周りは平らな牧草地で、たくさんの牛たちがのんびり草を食んでいる。 冬支度で里のほうへの移動が始まっており、残っているのは半数ぐらいだそうだ。 4Kmほどの道はデコボコの地道で車がとても揺れる。 「どうして舗装をしないのよ〜。」 とおばはん。 これがこの大自然になじめない者の証?


 林立するテレビ塔と同居する王ヶ頭ホテルは思いの外立派な建物。 ここが美ヶ原の最高地点で、何も30分もかけて王ヶ鼻まで歩かなくてもここからの眺望が最高らしい。 ここまでならば誰でも来ることができる。 いかに年をとっても、ハイヒールを履いてでも・・・。

 チェックインのあと急いで向かったホテルの裏のケルンが積まれた王ヶ頭からは早くもお日様は雲に隠れ、雲の隙間からわずかに顔を覗かせ、周りの雲と晴れた空を茜色に染めている。 日が沈むとかなり冷えてきた。 

 部屋には暖房が入っていないじゃん。 スチームの入れ方がわからずウロウロ、ウロウロ。 この手の暖房はすぐには暖かくならず、今はともかくこれからどんどんと寒くなるのがわかっているのだから、最初から入れておいてよ〜。

 食事はまずまず。 十分な量にもはや満腹。 だが何かの勘違い? 最後のデザートと同時に、「忘れていました。」 とその係りである女主人らしきおばさん?が岩魚の塩焼きを運んできた。

 なに、それ〜。

 給仕をしてくれていた笑顔が可愛い若い女の子の困ったような申し訳なさそうな顔。 一箸つけただけで・・・。 その子の笑顔に免じ、許すとするか〜。 最も二人とも川魚はあまり好きでもないことだし〜。 まあ、いいっかぁ〜。

 部屋の明かりを消すと窓から見えるたくさんのお星様。 だが9時過ぎにもう一度見てみると今度はガスで真っ白。 暖房がなかなか効かなかったせいか奥方様、少し風邪気味? いつものように持って来た風邪薬を飲んで早めのご就寝。 大事無ければよいが・・・。

 テレビを消し、ようやく寝付いた11時過ぎ、携帯電話の呼び出し音で目が覚める。 

「メール見てくれた〜?」 と長男の声。
「いや見られない事情がありまして・・・。」 私はパソコンのメールだけで携帯電話のメールは契約をしていない。 

「今どこ?」 
「美ヶ原。」 
「どこよ、それ〜。 また〜?」 とあきれた声・・・。

 甲子園の日本シリーズへのお誘い。 幸いにも奥方様は目覚めることもなく熟睡中。

 「おかんの都合を聞いて明日連絡するわ〜。」

 眠りついたところを起こされて、目が冴えてきた。