◇番外編 PART-2 日本シリーズ観戦記 2003.10.21〜22 (火〜水)
いよいよ日本シリーズが始まる。 何とか観戦したいがチケットを手に入れるのがかなり難しい。 発売当日、必死で電話、それとネット。 だがあえなく惨敗。 一度だけチャンスはあったのだが・・・。
締め切り間際の午後11時40分ごろ、ネットがつながった。 必要事項を書き込み、いざ申し込み。 ところがその途端、回線が切れてしまった。 何らかのこちらのミス? どうせ申し込んでも抽選ではあるが・・・。 これではテレビ観戦で我慢するしかない。
だが我が家の山の神はまだ諦めてはいなかったのだ。 長男なら必ず手に入れている・・・と言い張り、聞くようにとのご命令。 もしそうであったなら彼から何らかの知らせもあるだろうし、この状態では手にいれるのは至難の業である。
無視を決め込んだが、何度も何度も・・・。 何でも彼が手に入れるのを夢で見たとまで言いだした。 あまりにもうるさく、13日、仕方無しにメールを送る。
「御元気ですか? おかんが甲子園へのお誘いがないと大変うるさいので、とりあえずメールします。 電話もネットもかからず皆同じだというのに、あなただけは違うと言い張っています。」
やはり返信は無い。 そのことも忘れたように我々は16日〜17日に美ヶ原方面へドライブ旅行に出かけた。 ところが16日、美ヶ原のホテルで寝付いたばかりの夜遅い11時過ぎ、突然携帯電話の呼び出し音で起こされる。
「遅くからごめん。 メール見てくれた?」 「いや、見られない事情がありまして・・・。」 どうやらチケットがあるらしい。 帰ってメールを見てみると・・・。
「返事遅くなってごめん。 なんでばれたんやろ・・・。 第三戦(21日)の三塁側アルプス席のチケットがあるが行く?」
おかん大喜び。 彼は18日の夜遅く、チケットを届けがてらに帰ってきて来てくれた。 なんでも甲子園パブリックビューイングの帰りらしい。 負けたあとだけにご機嫌悪し。 裏技を駆使してネットで9回も申し込み、そのうち一つだけ当たったらしい。 さすがプロ?
「料金は払ってよ。」 「お金取るの〜?」 「当たり前やろ〜。 いつもよりは高いのだから。 この券をネットで売って他の日と交換するつもりだったのに〜。 安くても一万円では売れるよ〜。」
このケチ! これが今日勝っていれば?
さて当日。 朝から雨。 それも強い雨が降ったりやんだりしている。 これでは試合をするのが難しそうだ。 だがその情報はなかなか伝わってこない。 遠くから来る人もいれば、この先も含め仕事の関係で困る人もあるだろうしね〜。 どちらにせよ簡単には結論は出ない?
仕方なく予定通り出発。 仕事が終わる奥方様を拾い、カーラジオからの情報に耳をそばだてながら、いざ甲子園へ。 これほど降ればいつもなら遅くても2時には中止になるはず。 レギュラーシーズンならその決定権は主催者の阪神球団が持っているが、日本シリーズはコミッショナーが決めるらしい。 それゆえ決定は4時過ぎになるとの情報。
ならば仕方がない。 無駄になるかもしれないが駐車場へ。 早くもかなりの車。 それも筑豊ナンバーを始め遠くからの車が多い。 もうじたばたしても始まらない。 腹をくくりウトウト。
3時20分ごろ、駐車場から出て行く車? 3時15分、中止の決定が出されたらしい。 やむをえないこととは言え、「駐車料金を返せ〜。」 と叫びたくなる。 だが我が家のおばはん。 「高速料金も返せ〜。」 さすが〜。
こうなれば仕方がない。 この際おばはんのご機嫌を取り、点数を稼いでおくか? 迷わず三田のサント・アンへ。 ケーキのあとは香里園の回転寿司、長次郎へも。 結局高いものについてしまったじゃん。 オーイ、ご長男さま〜。 チケット代、何とかしてくれ〜。 トホホ・・・。
翌日は快晴。 絶好の野球日和である。 駐車場もいつもより出足は早いようだ。 興味があったダイエーの店内では、さすがに六甲おろしは聞かれず、一階にあったタイガース関連の売り場がダイエーグッズのコーナーに取って変わられ、タイガースショップは地下に追いやられている。 だが客の数は言わずもがな。
開門の4時15分。 かなりの人が並びだした。 全席指定のため殺気立った気配は無いが、二連敗のあとだけに、今日こそは・・・の気合は感じられる。 三塁側アルプス席のため、ダイエーファンに囲まれて小さくなっていなければならないのか? と少しばかり心配していたが、並んでいる人は全て阪神ファン。 これで一安心。
ところが席を探して石段を下り始めると、ドンクサイおばはん、階段を踏み外し転んでしまった。 たいしたことはなさそうだが、かなり痛そう。 どうすることも出来ず・・・。
試合が始まる前にトイレへ、と行ったままなかなか戻ってこない。 しばらくして球場の係員が、「転んで捻挫をされ、救護室に行かれましたが、たいしたことは無いので心配しないようにとの伝言です。」 とわざわざ言いに来てくれた。 またやったのか?
しかし長男はまだ現れず、荷物を置いたままで席を離れることも出来ない。 だがなかなか帰ってこない。 いよいよ心配のあまり荷物もそのまま救護室に向かうことにした。 係員は、この忙しいときなのに球場の外のだいぶ離れた救護室まで案内してくれ、再入場の手配までしてくれた。 誠に申し訳ないことで、この親切は心にしみる。
ところがこのおばはん、のんきな顔をして湿布をしてもらい、挙句に帰ってから貼る湿布まで貰っている。 二度転んだのではなく大事をとって救護室を尋ねたが、こんなに遠いとは知らなかったらしい。 一安心。 あまり心配さすな〜。
席に戻るともはやシートノックも終わり、先発投手のムーアと和田を含め、メンバーも発表され、試合開始を待つばかり。 間もなく長男も到着。
レフトスタンドの少しばかりのダイエー応援団を除き、球場全体が阪神ファンで埋め尽くされ、9月15日に優勝を決めたとき以上の雰囲気。 セレモニーのあと、吉田義男さんの始球式で試合が始まった。
さすがにこちらには応援団のリーダーはいない。 それでも全員ライトスタンドの応援にあわせようと心を一つに懸命の応援。 しかしライトスタンドはあまりにも遠く、目で見る動作にあわせると音は遅れて届き、全てを揃えるのはなかなか難しい。
当然ながら攻撃中は立見席に変身。 やはり試合をゆっくりと楽しむ雰囲気ではない。 すぐ近くのダイエーの応援団も人数は少ないが、トランペットの音が大きく、かなり耳障り。 いやこれはお互い様? 我々の何十倍も感じている?
伊良部が言っていたように、この世界一の応援をダイエーの選手をはじめ、レフトスタンドの一握りのファンがどのように感じているのか、ぜひ聞いてみたいものだ。 私はこんな凄まじい応援を相手に、まともな試合が出来るほどの心臓を持ち合わせてはいないが・・・。
試合は一点を巡る緊迫した展開。 すぐ近くから守備に着いたレフトの金本へ黄色い声。 ついには 「金本さ〜ん。 結婚して〜。」 そのあとの打席で金本は同点ホームラン。 やはりあの声が聞こえた?
ついに延長戦に突入。 10回裏、モンキーの犠牲フライでサヨナラ勝ち。 周りは飛び上がるやら抱き合うやら・・・。 大騒ぎである。 私も思わずおばはんと熱い抱擁。 そして我が息子とは硬い握手。
やがてお立ち台では心憎い監督の饒舌な話し振り。 そしてモンキーのユーモアたっぷりのインタビュー。 あとはお決まりの六甲おろしと各選手の応援歌。 阪神ファンも立派な応援ができるようになったものだ。 少し前までは一番マナーの悪いファンだとさげすまれていたと言うのに・・・。
だがこれでやっと一つ勝てただけである。 日本一には甲子園で三連勝するしかない。 頑張れ阪神タイガース。
追記 10月27日(月)
フルに戦った日本シリーズがようやく終了。 完全に内弁慶シリーズとなり、ホームゲームが多かったダイエーが優勝。
王さん、おめでとう。 実を申せば私は隠れ王ファンである。 一歳年上の王さんは春の甲子園の優勝投手だが、その夏、甲子園駅でお目にかかったことがある。 と言ってもすぐ近くで見ただけであるが・・・。
背の高い大きな目をした爽やかな感じの早稲田実業の高校生であった。 その日の試合でのレフトスタンドへのライナーのホームランは、いまだにまぶたから消えない。 当時は金属バットなど無く、高校生が反対方向へホームランを打つことなど考えられなかった時代である。 それを目の当たりにして、とんでもない高校生もいるものだ・・・と思ったものだ。
それがにっくきジャイアンツに入団。 そして世界の王へと成長していかれた。 ど派手なスタンドプレイの長島の陰に隠れて、わが道を歩かれた彼の爽やかな生き様は、甲子園駅で見たそのままの人柄を髣髴とさせてくれる。
今回の日本シリーズは観客動員数300万人を優に超す両チームのファンの戦いでもあった。 選手の実力は言いたくは無いがダイエーが勝っていた。 それが一方的な展開にならず、最終戦まで来られたのはファンの後押しがあったからなのだろう。
我が息子などは甲子園の試合は第3戦では私たちと、第5戦はネットで高いチケットを買いスタンドで観戦、福岡ドームの試合はすべて甲子園のパブリックビューイングに出かけたと言う。 ようやる・・・。
実力差は勿論、そんなファンの気持ちが星野さんも口には出さずともわかっていたはず。 それが最終戦にもかかわらず、思いの外柔和な顔つきと、選手をはじめファンにねぎらいの言葉と感謝の気持ちをこめ、素直な言葉で語られていたのだろう。 最も本人の監督としての最終戦であったことも・・・。
思えば開幕戦が全てであった。 せっかく逆転しても頼みのエースが乱調。 延長戦が15回との規定にやむを得ず安藤の続投。 この試合を境にダイエーが勝った試合は楽勝。 一方阪神が勝った試合は接戦を通り越し、綱渡りの一点差。 これを見ても力の差は歴然としている。
残念なのは先に王手をかけたとき、星野監督は6戦、7戦を見据えた発言をしておられた。 もし本当に勝負にこだわるならこれは間違いである。 選手たちには指揮官の微妙な心の隙間も伝わるものだ。 彼らには違ったことを言っているのだろう・・・と思っていたが、第6戦の先発が伊良部と聞き、私は半ば諦めた。
第2戦で滅多打ちにあった投手である。 今の彼の力では、この強力なダイエー打線には通用しない。 まして後がなく、開き直った敵には自信が持てる格好の相手ではないか。 星野さんは伊良部の功績と自尊心を考慮し、勝負を第7戦に託した。
だがシーズン始めの調子の良い打線ならまだしも、後半の少しもろさが蘇りつつあったチーム力とダイエーの強さを認識していれば、第7戦は無いものと思わねばならない。 ここに熱血監督星野さんの、本当はこの上なく優しい心の持ち主である・・・と言う本心を見たような気がする。
日本一は次の監督へ宿題として残しておく。 実際このまま優勝してかっこよく勇退・・・などと派手なことをやられたあとの次期監督岡田は、やりにくいことこの上ないではないか。 そこまで考えていたのならこんなに心の優しい人はいない。 リーグ優勝もいつでもどこでも胴上げが出来たのに、甲子園で決めてくれた人である。
本当のところはどうであれ、宿題を残されたのは事実。 来年がまた楽しくなったではないか。
監督・・・。 本当にご苦労さんでした。 体をお大事にして下さい。
それにしても、監督業と言うのは、つらくてきびしい仕事ですね〜。
星野さん・・・。 ・・・、・・・。
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