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◇雪の大谷ウォーク 2004.4.22(木)


 ここ3〜4年前からのこと・・・。

 この季節になると奥方様は、立山の雪の大谷ウォークに行こうと言い続けている。 だが休日との兼ね合いもあり、期間と天候の壁に阻まれ、いまだにその目的を達成できずにいた。 どうせならピーカーと晴れた雪山を見てみたいものでもあるしね〜。

 しかし今年は4月17日〜30日、5月6日〜30日と大幅に期間が延長された。 これなら何とかなりそうかな? だがそんなに待つこともなく、早速そのチャンスがやってきた。 22日の奥方様の休日には全国的に晴天に恵まれそうだ。 ならば出かけよう。

 これだけ北陸方面へ出かけていると、どう走れば効率的かがわかってくる。 当然のことながら日帰りである。 ならば帰りは高速道路を利用したほうが無難であろう。

 ここに来てさすがに今までのようにはいかなくなって来た。 翌日が奥方様の休みなら国道をゆっくり走って夜中に帰ればよいが・・・。 我が体力の問題もあるしね〜。

 そこで一万円のハイウェイカードを有効利用。 富山〜瀬田東は6450円である。 ならば行きは曲がりくねった海岸線で距離の割には時間がかかる敦賀〜武生間で高速道路を利用しよう。 料金は1050円。

 武生からはほとんどバイパスを走れる。 残りは3000円。 瀬田西〜敦賀間は2900円だが、もし魚津の蜃気楼が見られるなら立山から魚津まで高速道路を利用したい。 前日の21日にはBランクの蜃気楼が発生したことでもあり・・・。 その料金が600円。 ならば金沢東〜立山間、1850円を利用したほうが時間的にも有利ではなかろうか。

 我が貧乏旅行は考えなければならないことが多い。 これがケチケチドライブの真骨頂である。 高速道路を往復利用してもたかが後2〜3000円のことだが、これをいかに切り詰めるか。 いろいろ考えることも旅をする楽しみの一つではなかろうか。

 ほぼ予定通りである。 それより10分早い6時20分に立山ケーブル駅に到着。 空は快晴。 まわりには名残の桜も咲いているが、寒さは全く感じない。 そのせいか空の色が何か白っぽい。

 早くも駅前の駐車場は7〜8割の車。 急いで窓口へ。 結構人は多いが、車の量から想像したほどでもない。 7時20分発で登ることにした。 室堂の視界は良好、温度は3度と表示されている。

 改めて車に戻り、出発の準備。 ところが真冬用の厚いダウンジャケットしか持ってこなかった。 いくらなんでもこれでは少し暑そう。 「薄手のものも持って行こう。」 と言っていた奥方様は、「だから言ったでしょう。」 とブツブツ。

 既述 (立山PART−1) の通り、私は40年前の5月の連休にスキーを担いで雄山に登った経験がある。 その時の教訓から服装など今回の準備をした。

 夜行列車で到着後、弘法小屋まで開通していたバスを降りた後は、降りしきる雨の中、重いリュックとスキー板を担いでひたすら登ったものである。 雨と霧にもかかわらず、たった半日で鼻の頭の皮が剥けた。 それほどまでに雪が照り返す紫外線は強い。

 初日の雨は夜半には雪となり、二日目の朝には30センチほどの新雪が積もっていた。 四日間で晴れたのは一日だけであったが、それでも三度も顔の皮が剥け、帰って見てみると顔はボロボロ、街中では見られたものでなく恥ずかしい思いをしたものだ。

 雲一つ無く、今まで見たことが無いような深く真っ青な空に晴れあがった三日目の朝、無人の一の越山荘の中の温度計はマイナス10度をさしていた。 雄山への登りでは凍った雪が青く輝き、登山靴に装着したアイゼンすら跳ね返しそうに堅く締まっていたものだ。

 それが翌日の最終日には猛烈な吹雪。 20数キロを滑って下りる予定であったのだがそれどころではない。 それより下山をやめるように注意される。 だがそこはサラリーマンの悲しさ。 仕事に穴を空けるわけにも行かず、勿論買っていたその夜の寝台車の切符ももったいない。

 半ば強引に出発したのだが、突風に吹き飛ばされそうでスキーを履いていると逆に吹き上げる風が体を押し上げ、斜面を登らせる。 ついには滑るどころか歩くことも出来ず、立っていることさえままならない。

 視界は全くなく、あとは10メートルほどの間隔に設置されたポールだけが頼りであった。 ついには同行の仲間も見えなくなってしまった。 周りに人影は無く、大きな声で叫んでも風がその声をかき消してしまう。 たった一人、心細い気持ちを振り払い、懸命に次のポールだけを探し、這うように下りて行った。

 ここで死ぬわけには行かない。 大げさではなく本当に思ったことである。 どれぐらいの時間が経過したのだろうか。 何とか美松山荘に到着。 仲間と再会。 自然に涙がこみ上げ、抱き合って喜んだものであった。

 それほどまでにアルプスの自然とは恐ろしいものなのである。 今ではその美松山荘も、弘法小屋も、二泊した房次荘も無くなってしまったが、甘酸っぱい思い出だけは今でも残されている。

 ところが今日はジーンズにセーター、靴はスニーカー。 仕方なく分厚いダウンジャケットを手に持ち、おにぎりとお茶、わずかなお菓子に雨合羽、カメラの三脚、それとタオルが入ったナップサックを背負い、帽子を被り、サングラスをかけてケーブルカーに乗り込んだ。 スキーを楽しむ人は思いの外少ないようだ。 ほとんどが観光客でほぼ満員である。

 美女平で高原バスに乗り換え。 早くも薄汚れた残雪が見られる。 出発して間もなく冬の光景に引き戻され、やがて周りの全てが白一色に変わって行く。 大きな薬師岳が美しい。

 弘法を過ぎ、やがて弥陀ヶ原。 だんだん雪の壁が高くなり、周りの景観を奪っている。 大日岳、奥大日岳・・・。 やがて剣岳が姿を現してくれた。 それと雄山も。 いつ見ても晴れた雪山は、何と美しいものなのか。 隣の奥方様もうっとり。 所々にシュプールの後が見えている。

 40年も経ったというのに、彼らは目に焼きついているそのままの姿で再度迎えてくれている。 いや、歓迎さえしていてくれているようだ。 いかに世の中が変わろうが、いかに立派なホテルが建ちトンネルを掘られようが、またこのきびしい環境には似つかわしくないとさえ思われるたくさんの人々が訪れようが、いつまでも変わらないものもある・・・と教えてくれているようだ。

 やがて雪の大谷を通り、8時30分室堂到着。 やはり外はかなり寒い。 厚いダウンジャケットで十分ではないか。 雪の大谷は10時からのウォークを楽しむとして、まずはトロリーバスに乗り込んだ。

 雄山の頂上直下をくり貫いて作られた立山トンネル3.7Kmをトロリーバスは10分で通過する。 この料金が2100円。 日本一、いや世界一高い料金ではないだろうか?


 くぐり抜けたところが大観峰。 目の前には後立山連峰の大パノラマ。 




 明るい太陽が燦燦とふりそそぎ、それに雪が反射してとても眩しい。 だが、残念ながら空の色が・・・。 これは少し欲張り過ぎか? やはりこの暖かさが影響しているらしい。



 慌ててタオルを取り出し、顔を覆う。 帽子を目深に被り目には濃いサングラス。 まるでこれから銀行を襲うギャングである。 奥方様もたっぷり日焼け止めクリームを塗った上に、マスク、マフラーなどで完全武装。

 眼下に見える黒部湖はまだ凍り付いている。 遥か下にとても小さく見えていたロープウェイが近付くに従い、その大きさを鼓舞するように目の前を通り過ぎて行った。



 黒部湖越しに見える赤牛岳、水晶岳も見てみたいが、黒部ダムは随分昔子供を連れて訪れたこともあることだし、今日の予定はここまで。 大パノラマを十分に楽しみ引き返すことにした。 

 雪の大谷は室堂ターミナルからバスが通る道の一車線、500mを歩行者に解放され、思い思いに散策できる。 高い雪の壁が続き、空の色もだんだん青味が濃くなってきたようだ。 今年の雪の最高地点は16mだそうな。


 寒くは無いが、ダウンジャケットでも暑くは無く、たまに帽子が飛ばされそうな強風が吹きぬけてゆく。 少し歩くと息切れがする。 やはりここは2300mを越える高所。 空気が通常の70%位らしい。

 雪の壁と言っても地層のように筋が付き、それぞれ微妙に色も違っている。 今年降った雪の歴史が刻まれているらしい。 少し黄色くなっているのは黄砂が混じっていた影響らしく、青いところは暖かい日に雪が溶かされ、それが凍った後らしい。 なんとも自然とは魅力ある演出をしてくれる。 

 やがてその区間が終わると、今度は大日岳、奥大日岳、剣岳、大汝山、雄山・・・、立山連峰の大パノラマが目に飛び込んできた。  

 えもいわれぬ光景に奥方様も声が出ない。 こんな素晴らしい雪山の姿を何の苦労も無く、見せてもらって良いものだろうか。







 40年前の、ややセピア色掛かった思い出の画面をもう一度はっきりと目に焼き付けなおし、室堂をあとにした。 

 立山駅から称名の滝を目指すが、落石のため近くまでは行けない。 2000年の秋には水量が少なく、右側のハンノキ滝に水は無かったが、今回は角度の関係で称名の滝はわずかしか見えず、その代わり豪快に流れるハンノキ滝がより勇壮に思える。 



 魚津市観光課に電話。 残念ながら今日は風が強く、蜃気楼は現れそうに無いらしい。 ならば滑川市のほたるいかミュージアムへ行ってみよう。

 ほたるいかの生態や光を出す様をじかに見ることが出来、それはそれなりに良かったが、後はやはり我々にはあまり興味のある所ではなし、それよりコース料理を食べてみたい。 だが、時間はまだ3時前。 中途半端な上、奥方様は富山へ来たからにはやはりお寿司らしい。 「お寿司にもほたるいかはあるでしょう?」 なるほど、ごもっとも・・・。

 と言うことで富山のいき魚亭へ直行。 少し早いおいしいお寿司の夕食と、その後は当然のことのようにケーキ屋さんへ。 菓子工房こうげんの静かな喫茶室でケーキとコーヒーをいただき、富山インターチェンジに向かった。

 奥方様は 「やはり富山は良いねぇ〜。 一度住んでみたいよ〜。」 とポツリ・・・。