◇大台ケ原 2006. 9. 4 (月)


 毎年のことだが、6月、7月になると尾瀬ヶ原の水芭蕉の可憐な映像が、新聞、テレビで紹介される。 それを見ていた我が家のおばはんが 突然 「来年は尾瀬に行く。」 と言い出した。 なに? 尾瀬? 私も昔から行ってみたかったところではあるが・・・。 だが、車で簡単に・・・とはいかないところ。 「そんなことわかっているよ。 歩けばいいんでしょ?」 良く簡単に言いますね〜。 まともに歩いたこともないのにね〜。 怖いもの知らず・・・とは貴女のことを言うようです。

 ただ、そんなに険しいところではないらしい。 1時間ほど歩けば到着し、後は平坦な道。 それも木道が整備され、歩きやすそうだ。 ならばあながち不可能なところでもない?

 となると少し鍛えなくてはならない。 そこで毎日、少しずつ運動を始めた。 これまでもできるだけ運動はしてきたが、目標があってのことではない。 9月になってようやく少しは涼しくなり、ここ2〜3日、安定した秋晴れが続いている。 ならば一度腕試しにハイキングにでも行ってみますか?

 と言う訳で行ってきました。 大台ケ原。 30数年前に奥方様と一度だけドライブに行ったことがある。 ただその時は国道169号線の一部や、大台ケ原ドライブウェイは舗装もされていなかったような・・・。 整備途中の吉野川沿いの国道と狭い山道をやっとの思いでたどり着いた駐車場は雑然とした冴えない森の中で、歩くことなど考えず、すぐに引き換えした記憶があり、悪いイメージしか残っていない。

 奈良から約100Km。 今は快適なドライブが楽しめる。 2時間あまりの道のりであるが、出発したのが7時30分。 通勤ラッシュに合い、到着したのは10時30分になろうとしていた。 海抜1571m。 空はあくまで青く、気持ちの良い秋の空だ。 そよ吹く風が心地良い。 昔とは大違い、駐車場も広くてきれいに整備され、立派な大台ケ原ビジターセンターが建てられている。

 まずはそのビジターセンターへ。 100円の地図を買い、コースを確認。 日の出ヶ岳までの往復の予定だが、案内の人は 「こんなに良い天気だからせめて正木ヶ原までは行ってください。」 とおっしゃる。 そのコースならゆっくりと歩いても3時間くらいだそうな。 「まあ、日の出ヶ岳で足と相談しますわ〜。」


 次はトイレへ。 トイレも係りの人がお掃除中。 美しくお手入れが行き届き、気持ちよく用を足せる。 協力金100円だって。 まあ、当然だよね〜。 さあ、準備万端。 10時50分、いざ、出発。

 地図によると日の出ヶ岳へは1.9Km、約40分の道のりとある。 静かな森に入ると美しい緑の木々。 ヒメザサ(イトザサ? クマザサより葉が小さい?) が木漏れ日に輝き、苔が生い茂っている。 木々の間からは真っ青な青空が覗き、古くなって倒れた木々やその切り株、蔦などが織り成す芸術作品とも見まがう姿にうっとりした様子の奥方様。 まあ、本格的な山へ入ったのは初体験のことだから、当然と言えば当然だけど・・・。

 森の中の雰囲気をたっぷりと楽しみながら、平坦な歩きやすい道をのんびりと。 20分ほどで中間点の標識。 ここまで見かけた人は数人ほど。 いくら好天だとは言え、まあ、平日のことだしね〜。 沢には美しい水が流れ、奥方様はその冷たさに驚いている。

 間もなく登りに差し掛かった。 良く整備された階段状の道をゆっくり、ゆっくりと。 さて、奥方様の膝は大丈夫だろうか。 後ろを振り返り、確認しながら登ってゆく。 いかに年を取ったとは言え、ここは経験者。 それに少しは運動していたおかげで、まだ余裕たっぷりだ。

 やがて尾根道に出たようだ。 標高は1637m。 なに? あれは海か? 熊野灘、尾鷲方面だろうか? こんなに近く見えるの? 少しもやはかかっているものの、はっきりと見て取れる。 これは驚いた。 そして感激である。 これだけでも来て良かったよ〜。



 さて最後の登り、あと300mとの標識。 急な登りではあるが、木道の階段が設置され、歩きやすい。






 ようやく1694mの日の出ヶ岳頂上に到着。 時間は11時40分。 1時間を予定していたからまずまずと言うところ。 鹿の家族がお出迎えしてくれ、疲れも吹っ飛んだ。 これは幸運なこと・・・。

 まわりは360度の絶好の展望台である。 北には大峰の山並み。 なに? 生駒山まで見える? 東は中央アルプスから南アルプスの仙丈岳、天気次第では富士山も望めるそうな。 南には熊野灘が広がっている。 西には正木峠。 涼しい風が吹きぬけ、汗ばんだ体を冷やしてくれる。

 展望台の下には立派なベンチがあり、ゆっくりと休憩、そして昼食。 奥方様が今朝にぎってくれたおにぎり、これは応えられない。 梨のデザートも結構なもので・・・。

 奥方様、ごろんと横になり、「気持ちいい〜。」 だって。 汗が乾くと涼しいのを通り越し、少し寒さを覚える。 半袖のTシャツの上に長袖のブラウスを羽織り、これでちょうど良い按配。

 さてどうしますか? 来た道をひき返す? 「こんなに良い気持ちなのにこの先へ行かない手はないよ。 私は大丈夫だから行こうよ。」 と奥方様。 見えている正木峠への木道がなんだか穏やかな登りのようで、手招きしているようだ。



 今度は300mの急な下りを周りの景色を楽しみながらゆっくりと進む。 正木峠までは思ったほどの急勾配ではなく、歩きやすい木道を進む。 距離は500mとある。 途中、少し紅葉しかけた木もあり、一足早い秋を感じさせてくれる。 標高1680mの正木峠では銀色に輝く倒木や枯れた木が織り成す風景に圧倒される。 正にこの世のものとは思えない。 なんだか不思議な景色だ。 熊野灘を眺めながらの快適な道が続いている。

 どうしてこんな風景になってしまったのかと言うと・・・。 その昔は鬱蒼としていた森が、1959年(昭和34年)9月26日、紀伊半島に上陸した伊勢湾台風により沢山の木が倒され、明るくなった地面をササがおおうようになり、ササを主食とする鹿が増え、増えた鹿が木の皮をはがして枯れさせたそうな。


 正木峠から正木ヶ原までは700m。 木道が整備され、のんびりと下って行く。 まわりには枯れた木の芸術作品が並べられているようだ。 ここでも運良く鹿と遭遇。 途中から木道がなくなると、今度は石がゴロゴロとした少し歩きづらい道となり、尾鷲の辻まで続く。 道に横たわる大きな蛇に奥方様、思わず悲鳴。 正木ヶ原から尾鷲の辻までは400m。

 尾鷲の辻からは中道をビジターセンターのある駐車場まで1.9Km。 森の中の緩やかな登りの、良く整備された道で歩きやすい。 2時50分、駐車場到着。 お昼ゆっくりして、ちょうど4時間。 何とか無事歩き終え、ほっと胸をなぜ下ろす。

 ちょうど良いハイキングコースなのだろうが、何分足腰の弱った我々年寄り夫婦には、ちょっとした山登りであった。 特に奥方様は初体験。 良く頑張りました。 少しは自信にもなった様子。 なに? 今日行けなかった大蛇ーへも行って見たい? オイオイ、すごいことをおっしゃいますね〜。

 今日使ったお金は・・・。 おにぎりとお茶と水を持参したから、ガソリン代を除けば地図代100円、トイレ200円、缶コーヒー150円、計450円だけ? やはり山は良いよね〜。

 そうそう、尾瀬ですが・・・。 この先、奥方様の望みが叶えられる日は来るのでしょうか? さて、いかがなりますことやら・・・。



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