旅 日 記

立山

2000年10月17日

 深夜の国道を快走。立山ケーブルの駐車場にはようやく明るくなり始めた5時過ぎに到着。少し早すぎた? まあ途中で急に予定を変更したのだから仕方がない。7時発の一番ケーブルに乗り、美女平で高原バスに乗り換える。結構人は多い。

 8時30分、室堂到着。天気は晴れ。思ったより寒くない。雄山、剣岳、大日岳・・・壮大な景観を前にして40年ほど前、5月始めの連休にスキーを担いで登った時のことが思い出された。

 現在では室堂までバスで登れるが当時は弥陀ヶ原まで。ところが除雪が間に合わず、弘法小屋で下され、後は足だけが頼りであった。荷物だけは雪上車で弥陀ヶ原まで運んでくれたのが大助かりだと喜んでいたっけ。

 それが今では・・・この変わりよう・・・ただただ驚くばかりである。

 みくりヶ池、みどりヶ池をのんびりと散策。大きくて美しい、そして荒々しい山々を目の前にし、さわやかな風がなんとも心地良い。記憶にある景色とはまた違った立山がそこにある。雪山も素晴らしいものであったが、いかに紅葉のピークは過ぎているとは言え、さすが立山、これはこれでなかなかのものではないか。

 室堂ターミナルで小休止。40年前に来たときにはこのような立派なホテルはまだ出来ていなかった。黒四ダムがちょうど完成したころか。その後アルペンルートが貫通。世の中の進化は驚愕に値する。そして今なお加速しているように思われる。

 心はずむ雰囲気と青い空。それとおいしい空気。このままバスに乗るのも味気ない。ならば天狗平まで歩いて下りることにしよう。途中急な階段もあり、思ったより時間がかかったが、何度も休憩を取りながらゆっくり、ゆっくり。

 大きなリュックを担いで登って来る登山者。そうだ、ここは若かりしころに憧れ、槍ヶ岳、穂高岳をはじめ何度か登った山と一緒の北アルプスなんだ。40年前は私も重いリュックとスキーを担いで雪を踏みしめて登ったっけ。

 大きな音を立てて登って来る高原バスを見ていると、そんなことすら忘れている我が身がなぜか恐ろしい。当然室堂までならハイヒールで来ることができる。これで良いのか? いや現代に生きるものにとってはこれはこれで良しとしなければならないことであろう。

 やはり下りは足腰にこたえる。いや、ただ年とともに体力が落ちているだけ? それはまぎれもない事実だろうか・・・。

 周りの景色が清涼剤となり、ハイマツに負けじと必至に生きている小さな草や木や花に励まされ、ようやく天狗平山荘に到着。この天狗平山荘、その時一晩お世話になったが当時の面影は全くない。小さな木造の山小屋だったかすかな記憶があるが、今は立派な、いや立派すぎる建物ではないか。

 見上げれば険しくも美しい剣岳・・・やはり山は心を和ませてくれる。また40年経とうが何も変わらないものもある・・・と教えてくれているようだ。

 天狗平からはバスに乗り、到着した弥陀ヶ原は紅葉が真っ盛りで、こういうのを錦絵と言うのだろうか、まるで絵葉書の世界である。たくさんの色を使って製作した貼り絵のような見事に色づいた山々を愛でながら、弥陀ヶ原ホテルのレストランでおいしい昼食。これ以上ない贅沢に幸せを実感する。

 すっかり曇り空になった中駐車場からゆっくり歩くこと30分。見上げるほどの高さから流れ落ちる称名の滝は圧巻である。さすが日本一。風に乗ってふりそそぐ霧が、汗ばんだ体を心地良く冷やしてくれた。

 盛りだくさんの充実した一日の疲れがなんとも爽快に感じられる。予報通り小雨が降りだした。立山駅近くの安宿へ飛び込み、ゆっくりと体を休めることにした。

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