旅 日 記

有峰湖〜安房峠

2000年10月18日

 最近の天気予報は良くあたる。雨、雨、雨・・・それもしっかりと降っている。さて、どうする?

 当然、雨の黒部渓谷へ行くつもりはない。しかし、このまま帰るのも癪に障る。さりとてこの雨の中、行く当てなど全くない。途方にくれながら取りあえず車を走らせた。

 カーラジオは地元の局の情報番組が流れている。なに? 紅葉情報? 現在有峰湖が見ごろ? ちょうど目の前には有峰林道への案内標識。エーイ、ままよ〜、どっちみち霧で見えないだろうが、行っちゃえ〜。

 通行料金1800円。なぜか注意書きのパンフレットまでくれた。当然地図付き。これはなに? ゴミ袋?

 急カーブ、急勾配、落石など、危険な箇所が多くあります。次の四原則を守ってください。

 1. 制限速度 20Km〜40Km
 2. わき見運転の禁止
 3. ゆずりあい
 4. 通行禁止箇所への進入禁止

 どうもご親切様・・・。

 しかし単なる脅しではなかったのである。これはひどい道。その上工事中。それもまだ道作りの本格的な工事である。ほとんど地道。おかげで車はドロドロじゃん。ところどころで対向できず、待たされる。

 「こんなんで通行料金、取るんかいな。」

 とケチなおばはん、ブツブツブツブツ。

 有峰湖が近くなり、どうにか工事区間が終了。今度は快適な道。この落差、なんとしたことか。まだ雨は降っているが、霧は晴れてきた。見通しも良好。見えてきた山は見事に色付いているではないか。これは素晴らしい。来てみてよかった〜。

 現金なものである。今度はこの通行料金を安く感じてしまうのがなんとも情けない。これが晴れていれば・・・。それは贅沢? だが天気の良い日にもう一度走ってみたいものである。

 なに? この先折立? ちょっと待てよ。これも若かりし頃、夏に雲の平へ登山したときにバスでここまで来てるじゃん。そうそう、38豪雪の時の遭難事故で若者13人の命が失われた遭難慰霊碑があり、改めて気持ちを引き締めたっけ。その38豪雪の時には野沢温泉へスキーに出かけたものの大雪でリフトが動かず、スキーができずに麻雀ばかりしていたことも思い出した。そうか、この道路、そんなところだったんだ〜。

 大きな有峰湖の静かな湖面と見事な紅葉を眺めながら静寂の中車を転がす。対向車には全く会わなくなった。周りには誰もいない。ここまでになるとなんだか心細い。今度はお猿さんがお出迎え。鳥の鳴き声以外音は全く聞こえない。間も無く料金所。と言ってもおじさんが一人いるだけで通行券を確認するだけである。地図を頼りにそのまま奥飛騨へ下りることにした。

 道の駅上宝は定休日。時間はまだ11時。雨は上がったようだが・・・。電話で聞くと乗鞍スカイラインは通行止めだそうな。新穂高ロープウェイは霧の中だろうし・・・さて、どうする?

 取りあえずまだ霧にむせんでいる平湯のバスターミナルまで行って昼食をとることにした。さて、高山に寄って帰ろうか・・・だが、二人とも不完全燃焼のようで何か物足りない。聞けば明日は晴れると言うではないか。そうなると余計にモヤモヤ・・・いやムカムカしだした。

 「そや、もう一泊して明日、安曇野でも行かへんか?」

 「うん、行く行く。」

 ならばと松本へ向かうことにした。

 安房トンネルを通っても面白くない。かといって安房峠は霧の中だし・・・だが我が大蔵省は財布の紐がかたい。やむを得ず霧の中へ突き進んだ。視界はゼロ・・・。

 ところが安房峠に出ると雲の上に出たらしく、青い空に太陽がまぶしい。その上燃えるような紅葉・・・それにもまして目の前には真っ白に雪化粧した穂高の雄姿・・・最高の景色に出会えたではないか。

 これは夢ではなかろうか。昨夜からの雨は高い山では雪だったのだ。こんなに幸運なことはない。数台の車、人影も少ない。が、その全ての人が喜びをかみ締め、口元が緩んでいた。

 そうだ、明日は上高地へ行こう。

 平湯温泉に今夜の宿を確保。場所を変え、充分に穂高の雄姿を目に焼きつけ、上高地乗鞍林道にも足を伸ばして黄葉もたっぷりと味わい心も軽くチェックイン。温泉で癒され飛騨牛が口の中でとろけた。

 今朝の雨からこんな一日を誰が予想できただろうか。感謝、感謝・・・。明日の早立ちに備え、早々に就寝。

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