旅 日 記

志賀高原

2004年10月18日

 「おとうさ〜ん、熱うてはいられへ〜ん。」

 隣の女風呂からカミさんの叫び声!

 「熱い湯が好きやろが。せやけどちょっと熱いな〜、俺も水を入れて入ってんねん。」

 その私も熱すぎて我慢も限界に達している。朝9時過ぎの野沢温泉大湯、ぬる湯でこれである。となりのあつ湯などは手も浸けられない。後から入ってきたお年寄りは水道の蛇口の側にそろりと入ったが、すぐに体が赤くなっていく。彼女はとうとう浸かれなかったそうな。掛かり湯だけでは温もらず、風邪でもひかなければ良いが・・・。

 八日市インターチェンジから高速道路を利用して6時間ほどで野沢温泉に到着した。これから志賀高原、万座温泉から小布施を目指す予定。カミさん、帰りに上田で松茸料理だそうな。

 温泉街を散歩して麻釜にも立ち寄る。なに? 野沢菜の浅漬け? これはおいしそうだが持ち帰るのは難しい? 車のトランクにはいつも発砲スチロールの箱が積んであるが・・・。なに? 氷を用意してくれる? しかし二人暮らしゆえそんなに多くは買えない。まあ、220円のものを二袋かな? それでも良い? ご親切、心にしみる。

 麻釜で茹であがった温泉卵ととうもろこしをほおばりながらほっこりした気分でゆっくり、のんびりと歩く。お行儀が悪い? 歳を考えろ? しかしこれもまた楽しいではないか。今度はカミさん、温泉饅頭を買ってきたがその数、三つじゃん。二人なのにどうして?

 「おいしいな〜。これやったら一箱買うてきたら良かった。」
 「出来立ての熱々やさかいおいしいんやで。」

 野沢温泉には、いやこれから向かう志賀高原にも度々来ている。だがそれは随分昔で、それも冬ばかり。真っ白な世界ならどちらも隅々まで頭の中に入っている。スキーに夢中になっていた若かりし頃が懐かしい。

 さて今日の宿を確保しておくとしよう。熊の湯辺りでも良いが明日のことを考えると少しでも先のほうが良いかな? 万座温泉ホテルは満室だったが万座プリンスホテルには空室があり二食付きツインルーム、一人14800円だそうな。

 これからが本番である。温泉街を抜け、急な坂道を登って行くとやがて野沢温泉上の平。空も晴れてきた。だが、紅葉となると? 見どころは銀色に輝き風に揺れるススキだけとは少し寂しい。だが妙高山を筆頭に北信五岳が望めたから、まあいいっか。

 巣鷹湖でカミさんはたくさんの鯉や緋鯉に朝食用に持ってきたクロワッサンを与えだした。一つ、二つ、三つ・・・。オイオイ、それはオレの餌だろ?

 志賀高原を目指す。奥志賀林道はブナ林や雑木林が多くところどころで美しく色付いた木々も見られるが、こんなものかな? 我々がこれまで各地で見てきた紅葉は美しすぎた?

 キャンプ場が設置されているカヤの平高原に立ち寄ったのがちょうどお昼時。しまった! こんなのんびりしたところならコンビニで弁当を買ってくるべきだった。出会った人たちが手に何かを持っている。きのこ狩りの帰りだそうな。

 ようやくきれいな水が流れる雑魚川の向こうに美しく色付いた山が現れた。このあたりが奥志賀高原らしいが、白い山しか知らず・・・こんな風景だったんだ・・・。すぐ近くののホテル、およびロッジには何度宿泊したことだろう。

 一の瀬から高の原へ、志賀パークホテルのパン工房、ル・プレのパンが本日の昼食。そう言えばこのホテルにも泊まったことがあったっけ。

 蓮池からは東館山からの樹氷原コースがクッキリ見えている。あれがブナ平、と言うことはその下がジャイアント、そして七曲りか・・・何とも懐かしい。

 横手山を目指し、まずは田の原湿原の木道を歩く。周りを白樺林に囲まれて広がる草紅葉、その中の小さな地糖にお日様が輝いている。あれが両面リフトか・・・。このリフトも何度か利用したことがある。と言うことはその先に木戸池があったはず。

 わずかにさざ波が立つ木戸池、静か〜・・・。

 結婚した年の5月の連休、横手山に春スキーを兼ねて志賀高原を訪れたことがあり、その時木戸池温泉ホテルに泊まった。だが我が家の奥様、全く記憶が無いそうな。もっとも私も訪れたことしか覚えていない。こんなホテルだったっけ? 40年近く時がたてばお互いこんなものですか。

 熊の湯を過ぎると横手山への登りに差しかかった。大きな緑の谷にところどころ美しく色付いた木々が点在し、全山紅葉とはまた違った趣である。

 この際である。横手山にも登ってみるか? なに? スカイレーター? 当時はこんなのは無く、リフトを何本か乗り継いだのを思い出す。

 スカイレーターから乗り継いだリフトを降りると早くも雪だるまが迎えてくれた。三日前に降った初雪が残っているそうな。当日なら峠は越えられただろうか?

 横手山からは雲は多いもののなんとか見渡せる。雲の上に見えているのは浅間山だろうか。その左に小さく見えているのは富士山? 朝ならまだしも時間も時間、贅沢は言えない。

 何年、いや何十年ぶりの志賀高原・・・もっとも真っ白な世界しか記憶になく、この時期に訪れることができ、感慨もひとしおである。

 山田峠は標高が2172mで日本の国道、最高地点だそうな。

 眼下には大きな草紅葉とそこに輝く小さな池が見えている。芳ヶ平湿原と言うそうな。この道も、この峠も昔走ったはずだが、こんなの全く知らなかった。素敵なところじゃん。そう言えばその昔、見事に転倒して新雪に埋もれたことがある。その渋峠はこの近くかな?

 白根山の駐車場から歩くこと10分あまり。かなりの登りに息が上がる。観光バスがずらりと並び、登山道はかなりの混雑である。時間は4時少し前。草津温泉や万座温泉に泊まるにはちょうど良いコースと時間なのだろう。

 カミさん、エメラルドグリーンのお釜を見て30数年前のことをようやく思い出したようで、

 「そう言うたら志賀高原に来たな〜。ほんでここから軽井沢へ行ったやん。」

 いやはや・・・。

 さて我々もホテルへ向かおう。万座プリンスホテルにチェックイン後すぐに温泉へ。かなり混雑している。目の前に広がる景色を眺めながら濁り湯の露天風呂でのんびり、ほっこり。随分長湯になってしまった。

 夕焼けの空がえもいわれぬ美しさである。明日の天気は台風23号の接近もあり崩れるとの予報だが、そんな気配は全く感じられない。何とかもって欲しいものである。

 さて夕食。和食、中華、洋食と選べ、我々が選んだレストランでの洋食は前菜のオードブルにスープ、それと牛肉、鴨肉、魚のうちどれか一品のメインディッシュとデザートだけ。狭いツインルームと言い、このホテルで14800円ならこんなものかな?

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