日本列島ドライブ日記

由布岳

 2009年(平成21年) 湯治と避暑

 2009年、年が明けても体調は相変わらず日替わりだし、特に左膝の痛みやむくみが消えず、それが体全体に広がってきたようだ。そこでいろいろ考えた挙句、一度湯治を試すことにし白浜温泉で1月13日から3泊した。短い期間ではその効果のほどはわからないが、気分転換にはなったのだろうか、晴れやかな顔も見られるようになり、少しずつ元気も出てきたかな?

 きわめて順調・・・そんな状態であった2009年3月、大体骨頭壊死の診断が出たのである。これもプレドニンの副作用だと言う。今のところはまだ大丈夫だがいずれ手術になり、人工骨を埋めなければならない。できるだけ歩くことも控え、絶対に転ばないようにと指示された。この先どうなるのだろうか。

 落ち込む私とは対照的にばあさんは開き直り、覚悟を決めたのだろうか。それとも白浜温泉での湯治が効果ありと実感していたのだろうか。

 「来年のことなんかわからんやろ。せやから今年は東北へ桜を見に行く。」

 と言い出した。そう言えば私も入院騒ぎの際にそんなことも考えたっけ。これは何とかしてやらねばなるまい。医者もその意欲を前向きに捉え、許可を与えてくれた。


 それからいろいろ試行錯誤が始まる。東北と言えば温泉だろう。2007年に滞在した弘前の経験もある。どこかで腰をすえ、各地を巡れば体にはそんなに負担がかからないのではなかろうか。それが温泉なら言うことは無い。

 また歩けないばあさんのためにどこでも座れるように携帯の椅子を持っていくこと、そしてできるだけ近くの駐車場を探すこと、その他タクシーや遊覧船、人力車などなど、利用できるものはないか・・・なに? 馬車? それもありかな? 今までいろんなところを訪れ、そのたびに計画も練ったが、こんなにネットをフル活用したり、頭を使ったこと、あったっけ?

 その結果宮城県の鎌先温泉、湯治棟で4泊、秋田県、水沢温泉の湯治宿、露天風呂水沢温泉で10泊することにして4月10日の午後7時に出発した。各地で満開の桜や可憐に咲く水芭蕉を始めいろいろな花たちに出会い、雪の回廊で冬の厳しさと、間もなく訪れる春の兆しを体感し、十和田湖までのロングドライブや各地の名物を味わった贅沢旅、もちろんのんびりと温泉に癒されたのは言うまでもない。

 ところが19日の朝、ばあさんの体調に異変が現れ、4泊をキャンセル。帰ってからの診察では薬を変えたのが原因で大した問題では無かったのだが、最大の目的であった弘前城の桜が宿題として残ってしまった。

 しかしその旅から徐々に笑顔も見られるようになり、体調も良くなってきたようだ。やはり病は気からと言うことだろうか。その証拠に朝のNHKのニュースでとっとり花回廊の薔薇の花を見たばあさん、「これから行こ。大山の新緑も見たいねん。」 これなら発病前のように、天気がええさかい、どっかへ行こ・・・などときままに行動していた当時といっしょじゃん。そんな光景を思い出し、なんだか嬉しくなったのを思い出す。

 そして8月3日から22日まで、春にお世話になった露天風呂水沢温泉へ避暑に出かけた。プレドニンは体温を上昇させ、夏は堪えるそうな。水沢温泉は標高が500m、エアコンはないが朝晩は特に涼しく、のんびりと温泉三昧。日に日に顔色も良くなったように感じていた。


 春には東北へ11日間、夏にはまた秋田の水沢温泉で避暑と湯治に20日間、なのに今度は秋に
北海道へ行くと言いだしたのである。来年のことはわからない・・・その思いは本心から出た言葉であり、覚悟があったことは容易に想像がつく。ならば無視もできず、何とかその思いをかなえてやりたい。

 そこで旭川のレオパレスで22日間逗留して各地で紅葉狩り、釧路のウィークリーマンションへ移動して11日間滞在、釧路近辺は勿論のこと野付半島から襟裳岬まで、そして登別温泉で一泊、函館で一泊の長期旅行に出かけた。これで北海道を完全制覇したと喜ぶばあさん、もう思い残すことはない・・・とつぶやいていたっけ。言い換えればそこまで思いつめていたのだろう。今思い返しても胸が詰まる。


Next  Back  Home