旅 日 記
いざ、南九州へ
天草 2004年2月15日(日)
早朝4時、下関、壇の浦サービスエリアでトイレ休憩。風が吹き、かなり寒い。わずかな海を隔てて暗闇の中に浮かぶ島影には多くの明るい光、見上げれば大きな関門橋、あの橋を渡ればいよいよ九州上陸である。
私は仕事などで何度か訪れたことはあるが、カミさんは修学旅行以来だと言うから初めての九州と言っても過言ではない。
週間天気予報ではようやく寒気も遠ざかり、ここしばらくは好天が続くそうな。ならば暖かな南九州へ・・・と思い立ったらもうたまらない。カミさんの仕事は多忙な時期でもなく、急なことながら無理を言って休ませてもらえた。旅の計画はかなり前に立ててあるから何の不安もない。
松橋インターチェンジで高速道路を離れ、8時に道の駅不知火に到着。目の前には青い海が広がり、空には雲が一つも見られない。
トイレに行ったカミさんがなかなか戻ってこない。まだ施設はあいていないはず。ところがミカンのような果物が入った袋を下げてきた。準備中なのに売ってもらえ、このあたりでしか取れないはるみという柑橘類が一袋詰め放題で500円だったそうな。
「うまいこと入れたらもうちょっと入ったやろか。ちょっと失敗したわ。」
オイオイ、この旅はまだ始まったばかりじゃん。これではこの先が思いやられる。
まずは天草五橋を目指すことにした。三角町から最初の橋、天門橋を渡るといよいよ天草である。だが2号橋の大矢野橋もただ渡ったというだけで何の変哲もない普通の橋である。通行量も多く、静かな海に浮かぶ島々をゆっくり眺めることもできず、緑が美しいのならまだしも、冬枯れのこの時期では何の魅力もない。天草とはこの程度のものなのか?
天草ビジターセンターの看板に誘われ、小さな丘へ向かう。可愛い赤ちゃんをおんぶして受付をしておられた若いお母さんが親切に見どころを教えて下さった。早速その高舞登山展望台へ。駐車場から急な階段を登ること5分足らず、その眺めにうっとり。ようやく天草の魅力を確認できホッ!
真っ青な空、鏡のように穏やかなマリンブルーの海、大小さまざまな島々をつなぐ赤い橋、白い橋、これが天草なのだろう。お母さん、ありがとう。子育て頑張って下さいな。
松島町に入ると道端に満開の菜の花畑が現れた。それも小さな群落が次々と現れる。なに? 百万本の菜の花? それはちょっと大げさだろ? ところが後で聞いてみると大きなお花畑もあったそうな。
「なにしてんねん。よう調べとかんかいな。何回失敗したら気ぃすむんや?」
またまた怒られてしまった。何ともはや情けないとは思えども、
「そんなん知らんがな。結構見られたやろが。あれで十分やろ。」
いやはや・・・。この情けない男のためにも、もうちょっとわかりやすい看板を出しておいてくださいな。お願いしますよ。トホホ・・・。
まもなく国道沿いに海老の宮川の看板が見えてきた。ばあさん、昼食にはお寿司と決めていたそうな。だが天草と言えば車海老だろ? エビフライが大好きなカミさんのこと、
「それもええな〜。」
ところが時間はまだ10時50分。まあ朝食もパンで済ませたことだし・・・と早めの昼食をとることにした。
車海老会席とエとビフライ定食を仲良く分け分け。やはり新鮮なものはおいしい。踊り食いをした残りの頭がまだピクピクと動いていた。
本渡市を過ぎると今まで鏡のように静かだった海がさわやかな風に誘われ、少しさざ波が立ってきた。さて、イルカウォッチングの船にいかに乗せるか、それが問題である。
とりあえず案内所へ。次の出航は1時で他に乗客はなさそうだが二人なら出してもらえるらしい。この海には200頭ほどのイルカが住みつき、5分ほどで巡り合えるそうな。
「乗り合わせのお客様がおられるとできませんが、もし気分が悪くなればすぐに戻ってこられたらいかがですか?」
と受付の女の子のアシストもあり、何とか説得。気が変わらないうちにいざ出港。
防波堤を過ぎると波はそんなに高くないのに小さな船は大きく揺れ、瞬く間にばあさんの顔色が変わり、無口になった。話の通り5分ほどで5〜6頭のイルカの群れに出会い、そんなグループがあちらこちらに見られる。
華麗に泳ぎ、時にはジャンプもしてくれる姿をおさめようとカメラを構えるが、船の揺れに妨げられ、なかなか思うような写真が撮れない。5分もたっただろうか。カミさん、もう限界を迎えている。仕方がない。帰ってもらうことにしよう。
しかし初体験のイルカに出会えたし、おおむね満足。いや、一番満足していたのは15分で仕事を終えた船長さん?
天草下田温泉が近くなり、いよいよ東シナ海が大きく広がってきた。視界いっぱいに続く水平線、何もさえぎるものがない大海原、そして広い空。そのどちらもが青、青、青。お日様の光にキラキラキラキラ、キラキラキラキラ。
さて、今夜の宿はどこにする? 予定では出水まで足を延ばしておきたかったが、目の前の雲が全くない海へ沈む夕日を想像しただけで、もう決まったも同然だろう。そこで海沿いに建つジャルデンマール望洋閣に飛び込んだ。空室があり一泊二食13000円だそうな。だが時間は2時半、ならばもう少し観光しようではないか。
十三仏公園からは北に妙見ケ浦の変化に富んだ海岸線を、南には白鶴浜の美しい砂浜が望める。コバルトブルーの海を眺めて、カミさん、
「きれいやな〜。やっぱり海はええわ〜。」
やがて天草ロザリオ館が見えてきた。なに? 天草四郎のことをあまり知らない? 歴史には全く興味のないお方ではあるが、天草まで来て彼のことを知らないではこの地のお人にあまりにも失礼ではないか。ならば少しお勉強しますか? というわけで我々の旅では珍しいことに入館料を払って見学。少しは理解できただろうか?
丘の上の大江天主堂では白い清楚な建物の、なんとも良い雰囲気にいざなわれ、初めて教会の中へ入らせていただいた。天井が高く正面には立派な祭壇、窓にはシンプルなステンドグラス。ペンキを塗り替えたところも確認でき、そこかしこに手作り感が漂っている。信者さんたちのボランティアがこの美しさを保っているのだろう。その様子に感銘を覚え、それ以上に厳かな雰囲気に圧倒された。
ところが我が家のおばはん、外へ出た途端無人販売をしているミカンを見つけ、早速品定め。一袋100円だそうな。やはりこちらのほうが似合っているのがなぜか悲しい。
改めてチェックイン。急いで温泉に入り夕日を待つ。部屋からは見えず、浴衣に丹前、その上からジャンパーを着込んで屋上へ。ところが防波堤が邪魔をして大海原へ沈む夕日が見られない。そこで慌てて車で2〜3分の絶景ポイントへ急ぐことにした。
ところが旅館のスリッパのままだし眼鏡も免許証も部屋の中。違反切符覚悟? いやこのあたりにお巡りさんはいないだろ? それよりこの平和な町ではその必要もない?
沈みかけたお日様の本日最後の大仕事、大きな海を光り輝かせ、ごつごつとした荒々しい岩を茜色に染め、優しい姿に変身させている。
大きな太陽が海に隠れだした。
「わ〜、だるま夕日やん。」
一直線の水平線がここが空と海の境界線だと主張している。サンセットラインの名に納得させられ、この場に立ち会えたことに幸せを実感、やがてこの大自然にも我が心にも茜色の余韻を残し、沈んでしまった。その途端、
「寒ぶ〜。」
豪華な食事が待っていた。次から次に出てくる料理に忙しく、生ビールがのどにしみる。席まで挨拶に来られた愛想が良く笑顔が可愛い美人若女将、30歳でまだ独身だそうな。
「何もないところですが、夕日と温泉だけが自慢です。」
いやいや、それだけで十分ではないですか。それにあなたのその笑顔があれば・・・。
その自慢の温泉に今度はゆっくりと浸かり、盛りだくさんだった天草の一日を振り返り、深い眠りについた。
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